2009 Fiscal Year Annual Research Report
刑法史学におけるナチズムの過去の歴史認識に関する総合的研究
Project/Area Number |
20530014
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
本田 稔 Ritsumeikan University, 法学部, 教授 (10268485)
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Keywords | 刑法 / 歴史 / ナチズム / 過去の克服 / 歴史認識 |
Research Abstract |
刑法史学におけるナチズムの過去の研究は、数多くの歴史家によって取り組まれてきたが、法律家による取り組みはあまり行われてこなかった。上記の研究課題に基づく研究として平成21年度に進めてきたのは、戦後ドイツ法学、とくに刑法学において取り組まれてきたナチズムの過去の克服の状況の分析である。 その内容としては、第1には、第2次世界大戦後のドイツの戦後処理の法的基礎となった連合国の条約や占領機関(管理委員会)の法令の整理である。第2には、その条約や法令に基づいて行われたニュルンベルク国際軍事裁判の内容、とくに処罰対象とされた「人道に対する罪」の内容と意義の分析である。第3には、日本だけでなくドイツにおいても十分に考察されてこなかった12件の「継続裁判」の内容の検討である。継続裁判については、「医師裁判」の研究が日本では紹介・分析されているが、平成21年度において特に重視したのは、「継続裁判」の1つである「法律家裁判」の分析である。法律家裁判の被告人は、ナチスの12年間において、ナチスの人種政策を法的に推進するために、司法省官僚、裁判官、検察官として活躍した人物である。それゆえ、戦後の法律家裁判では、彼らが行った職務が犯罪として問われ、その罪責が明らかにされた。その意味で「法律家裁判」の意義は大きいといえる。ただし、彼らの過去は十分に克服されたとはいえず、課題を残すことになった。その背景事情や原因などについても検討し、その内容についても公表のため、現在のところ準備中である。
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