2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20530015
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Research Institution | Fukuoka Institute of Technology |
Principal Investigator |
西村 重雄 Fukuoka Institute of Technology, 社会環境学部, 教授 (30005821)
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Keywords | 後見人 / 民法 / ローマ法 / フランス後見人法 / 法定抵当権 |
Research Abstract |
被後見人財産管理から後見人の負担する債務につき後見人の全財産に対し、被後見人が黙示の抵当権する、とコンスタンチヌス大帝勅法C.5,37,20により創設されたとするのが、現在の学界の通説で、殆ど異論がない。しかし、同勅法はその規律をあたかも既存のごとく述べ、また、先行する勅法にもそれを前提とするかのようなものが存在する。ローマ質権、抵当権関係史料を幅広く検討すると,黙示的質権、抵当権の多くは、当事者間の契約による質約束の慣行の中から成立していることが確かめらる(その代表的なものとして、土地賃貸人の賃借人の持込物の質約束、その欠けた場合にも黙示的質権を擬制)。後見人の財産に対する黙示の質についても、同様の展開が考えられ、実際、Scaevola、D.20,4,20prは後見人の質約束事例を論ずる。ここでは、後見人に対する有責判決の後、直ちに執行せず,後見人の全財産(将来取得財産をも含む)の質入を約定している。この約定によって,被後見人は、後見人の他の債権者達に対して優先弁済権を取得することとなる。この約束が、後見人敗訴判決後になされていることは、とりわけ注目に値し、コンスタンチヌス大帝勅法においても"後見人が債務者であるなら"との言明もこれと連関sるるかも知れない。また、現実には、後見人には被後見人の年長親族が就任することが普通であるから、被後見人が、後見人に対する債権の取立てないし個別的担保確保につき、他の債権者に遅れることが殆どだあると想定するなら、被後見人の債権保護の必要性は、より高くなる。このことは、妻の夫に対する債権についてもあてはまり、ローマ法においてのちに妻に法定抵当権が認められるにいたるのも同様の状況によるもとおもわれる。なお、フランス後見法の範となったノルマンディー地方のルーアン高等法院判決原本資料から、後見計算事案は年平均約4~5件であり、後見人無資力事案は、稀に生じると推定されよう。
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Research Products
(1 results)
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[Journal Article]2009
Author(s)
新井誠
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Journal Title
ドイツ法の継受と現代日本法-ゲルハルド・リース教授退官記念論文集(日本評論社)
Pages: 607〔99-126〕