2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20530023
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
木下 和朗 熊本大学, 大学院・法曹養成研究科, 教授 (80284727)
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Keywords | イギリス憲法 / 両院制 / 二院制 / 議会法 / 貴族院 / 上院 / 第二院 |
Research Abstract |
本研究は、実質的意味における憲法秩序との関連において、上院(第二院)の存在意義及び特質を理論的に解明した上、両院関係並びに上院の組織及び議事手続のあり方を実証的に解明することを目的とする。第一に、これまでに実施した研究成果のとりまとめを行った。[1]立憲主義の担い手としての上院の存在理由や機能に照らして注目される、上院の憲法保障機能に関する論文を公表した。また、憲法入門書を改訂する際、参議院選挙区選出議員の定数不均衡と投票価値の平等に関する説明を新たに執筆した。[2]両院制に関する比較研究及びイギリス議会貴族院の歴史的展開に関する分析を踏まえて、両院制の理論に関する論文を執筆した。議院内閣制における上院を政府の政策選択に係る戦略に影響する制度と理解して、上院の補正機能をその存在理由として再評価した上、日本における両院制について下院優位型を基調とする準則化の可能性を検討するものである。[3]1911年議会法制定以後から1949年議会法制定までの間における下院の優越性の形成過程に関する論文の執筆を継続した。[2]及び[3]の論文は次年度に公表する予定である。第二に、[1]1999年貴族院法制定以後の貴族院における政府法律案に対する修正の増加や、[2]憲法委員会など、下院の特別委員会とは異なる性質の任務も有する特別委員会の活動という近時の運用を中心として、これに不可欠な文献及び第一次資料を収集、利用して、イギリスにおける研究成果を検討しつつ、研究を遂行した。貴族院の民主的正統性の強化と権能行使の活性化との相関関係について知見を得た。併せて、2010年5月に成立した保守党・自由民主党連立政権下の貴族院改革に係る動向を整理、検討した。第三に、12月、以上の研究の遂行及びとりまとめに不可欠な文献と資料を補充、調査するために、東京へ調査研究旅行を実施した。
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