2009 Fiscal Year Annual Research Report
ラテン・アメリカにおける民主化と人権救済制度の研究
Project/Area Number |
20530025
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Research Institution | Surugadai University |
Principal Investigator |
北原 仁 Surugadai University, 法学部, 教授 (50195278)
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Keywords | ラテン・アメリカ / 立憲主義 / 民主化 / カリブ海諸國 / 法令審査 / 日本国憲法 / アムパーロ |
Research Abstract |
平成21年度の研究では、キューバにおける立憲主義と社会主義との相克を明らかにした。その際、キューバの立憲主義を歴史的に遡ることによって、キューバだけでなくプエルトリコ、ニカラグア、ハイチ等のカリブ海諸国の憲法史も研究することができた。また、メキシコ自治大学の研究者との学術交流を深める中で、マック=グレゴル博士の『憲法訴訟-ヨーロッパとラテン・アメリカにおける起源と発展』(成文堂、2010年5月発行予定)を翻訳することができた。この翻訳を通じて、ラテン・アメリカ型の人権救済制度の拡大深化が確認できた。 このように研究を深化させていく中で、ラテン・アメリカ諸国の中でも、中南米諸国とカリブ海諸国とでは、立憲主義のあり方が違うことが明らかとなった。前者は、アムパーロ訴訟というメキシコ起源の人権救済制度が発展しえるのに対して、後者では、アメリカ合衆国型の法令審査制度が導入されているだけでなく、そもそも憲法自体が合衆国の強い影響を受けているのである。 平成21年度の研究では、この点に着目し、アルゼンチンにおける調査研究によっても、上記の仮説が確認できた。その原因は、アメリカ合衆国のカリブ海進出にある。特に、米西戦争によって、合衆国は、キューバ、プエルトリコ、グアム、フィリピンに対する主権を獲得した。合衆国は、これらの国々を占領し、「民主化」する過程で、アメリカ型の立憲主義を導入した。この導入の仕方は、米西戦争に始まるのではなく、古くは、1787年の「法制部条例」に遡ることができる。 以上のような研究課程において、カリブ海諸国とフィリピンにおける合衆国の占領と民主化の経験は、日本国憲法の成立にも影響を与えたのではないかという極めて重要な問題意識をえるにいたった。このような視点からの研究は、従来まったくなされておらず、21年度の研究においては日本国憲法の成立史にとってもきわめて重要な一定の成果を上げることができた。
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