2009 Fiscal Year Annual Research Report
「自律」を支えるものとしての、労働に関する権利―「個人の尊重」を解釈基準として―
Project/Area Number |
20530028
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
押久保 倫夫 Tokai University, 法学部, 教授 (30279096)
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Keywords | 個人の尊重 / 勤労の権利 / 生活保護 / 生存権 / 自由からの逃走 / 博愛 |
Research Abstract |
本年度は、本研究の中心概念である日本港憲法13条前段の「個人の尊重」の理解を深め、それに基づく憲法上の「勤労の権利」の解釈の指針を探求した。 『リアル憲法学』では、その編集のほか、第2章「『博愛』への想像力-個人の尊重-」を執筆した。そこでは、預金、学資保険、車の借用等の通常の人には認められている行為のために、生活保護を廃止・減額された措置が無効とされた事件を例に、生存権等あらゆる人権の背後に、13条が存在することを示した。そして、「個人の尊重」を、一方で全体主義との対比で自らの人生は自らが決めることと定式化すると共に、決定の重荷による「自由からの逃走」の危険の指摘し、その克服にも触れた。他方で、「個人の尊重」は利己主義とは全く異なり、見ず知らずの人や理解し難い人も含めて、すべての個人を自分や家族と同様に尊重することであり、「博愛」の思想につながるものであることを明らかにした。そして、この崇高な理念に現実を近づけるには、自分とは全く異なる存在を理解しようとする想像力こそが求められることを、金子みすずの詩を媒介として説明した。 そして、このような人権の基本理念である「個人の尊重」を基礎として、諸個人の生き方の多様性を増大させる為に、勤労の権利の拡大をめざす研究を行い、現在それを論文の形でまとめようとしている。
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Research Products
(1 results)