2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20530040
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
森 肇志 Tokyo Metropolitan University, 社会科学研究科, 教授 (90292747)
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Keywords | 武力不行使原則 / 国際連合憲章 / 自衛権 |
Research Abstract |
本研究の1年目である本年度は、関連する学説の検討を進めた。冷戦終焉以降、国際社会における武力行使はむしろ増大しており、それに対応して関連文献の数は夥しい量に上る。今年度はモノグラフとしてまとめられたものを中心に検討を行った。 こうした検討と並行し、歴史的再検討の重要性に鑑み、これまで進めてきた19世紀中葉から国連憲章制定にいたる自衛権概念の展開についての研究をまとめ、東京大学出版会から、『自衛権の基層:国連憲章に至る歴史的展開』として出版した。 今年度に行ったその出版準備の中で、国連憲章の制定過程、とりわけ憲章第2条4項の、「国際連合の目的と両立しない他のいかなる方法による」との但し書きについての米国代表団の見解を明らかにした。すなわち、米国代表団は、同国の代表団会議における議論においては、国連の目的と両立する武力行使は許されると一貫して理解していたのに対し、サンフランシスコ会議における議論においては、「[国連]の目的に合致すると主張してなされる、国家による単独主義的な武力行使を承認する」ことになるという他国の危惧に対し、それを明確に否定した。こうした米国の態度は一見して矛盾するものだが、米国自身はそれを矛盾するものとは理解していなかったと考えられる。すなわち、米国は、「[国連]の目的に合致すると主張してなされる、国家による単独主義的な武力行使」と国連の目的と両立する武力行使とを区別しており、その区別は、目的との両立性について国連安全保障理事会の判断に服するとすることによって維持されると理解していたのである。この点は、自衛権にとどまらず武力不行使原則を対象とする本研究においても、検討の出発点となろう。
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