2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20530040
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
森 肇志 Tokyo Metropolitan University, 社会科学研究科, 教授 (90292747)
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Keywords | 武力不行使原則 / 国際連合憲章 / 自衞権 |
Research Abstract |
本研究の2年目である本年度は、昨年度に続いて関連する学説の検討を進めた。冷戦終焉以降、国際社会における武力行使はむしろ増大しており、それらを対象とした関連文献が続々と公刊されてきており、それらは夥しい量に上る。今年度もモノグラフとしてまとめられたものを中心に検討を行った。 こうした検討と並行し、武力行使に関連する近時の国際判例の検討を進めた。関連裁判例としては、もはや古典的というべきニカラグア事件(国際司法裁判所(ICJ)、1985年)のほか、オイル・プラットフォーム事件判決(ICJ、2003年)、パレスチナ壁建設事件勧告的意見(ICJ、2004年)、コンゴ領軍事活動事件(ICJ、2005年)、武力行使の合法性事件判決(エリトリア・エチオピア請求権委員会、2006年)に加え、武力行使とはなにか、という観点から、スペイン・カナダ漁業管轄権事件(管轄権判決)(ICJ、1998年)、サイガ号事件(第2判決)(国際海洋法裁判所、1999年)、ガイアナ・スリナム仲裁事件(2008年)などを取り上げた。その結果、海上での警察活動の際に外国船舶に向けられるUse of Forceが、国連憲章2条4項で禁止される「武力行使」なのか、あるいはそれとは区別される「実力の行使(国連公海漁業協定22条1項(f)参照)」なのか、という問題につき検討を深めたほか、自衛権の必要性および均衡性原則につき、ある武力行使が自衛権の行使として正当化されるためには、武力攻撃の発生が前提とされ、その上で、自衛権の行使として行われる措置が当該攻撃に対応するために必要であり、かつそれとの間で均衡のとれたものであることが求められるとされていることなどが明らかとなった。こうした検討の結果は、一部を『法学教室』352号(2010年)に「演習・国際法」の形で掲載したほか、より実質的には、2010年度に改訂される『講義国際法』(有斐閣)のなかで展開される(提稿済み)。
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