2011 Fiscal Year Annual Research Report
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20530047
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
水町 勇一郎 東京大学, 社会科学研究所, 教授 (20239255)
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Keywords | 労働法 / 労働史 / 比較法 |
Research Abstract |
1.日本及び欧米の労働社会や労働法の歴史に関する既存の研究の文献・資料の検索・収集を国内の図書館、書店等を通じて行った。 2.1.で収集した文献・資料を整理・分析し、日本と欧米の労働社会や労働法の歴史的基盤についての比較研究を進めた。 3.労働法の歴史の比較研究にあたり、労働法の歴史に造詣の深いAntoine LYON-CAEN教授(パリ西大学)と濃密な議論を行い、情報の提供と示唆を受けた。 4.以上の研究・情報収集により得られた成果はなお中間的なものであるが、そこで得られた知見の概要は、以下の通りである。 (1)日本の雇用・労働は歴史的・社会的条件に規定されつつ多様に変遷してきたものであり、かつてから「日本的」という特定の性格(例えば「終身雇用」的・「共同体」的な性格)を一貫してもってきたものではない。同様の性格は、欧米の中世社会においてもみられたものである。 (2)現在の日本の雇用・労働の特性(欧米の雇用・労働との相違)の起源の多くは、江戸期中盤から明治期以降の「近代化」のプロセスの違いに求められる。 (3)1990年代以降のグローバル化のなかで世界の労働をめぐる状況は近接化してきているが、そこで求められている「集団」による「コミュニケーション」のあり方は、それぞれの歴史的・社会的条件に規定されつつ、各国ごとに様々な形で顕在化してきている。 (4)近年の「集団」による「コミュニケーション」には、多様な状況変化への迅速で柔軟な対応という現代的側面があるが、そこには「集団」による差別の再生産という弊害も潜んでおり、後者への留意とその克服が、欧米諸国においても新たな課題となりつつある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
日本の歴史的研究を基盤に、欧米諸国の労働法の歴史と比較研究するという計画は順調に進んでおり、その成果も下記の書籍・論文等により部分的に公表している。その過程で、ヨーロッパの労働法の権威であるAntoine LYON-CAEN教授(パリ西大学)に積極的に研究面での支援・協力をいただいたことは、本研究を進捗・深化させるうえで大きな知的基盤となった。
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Strategy for Future Research Activity |
平成23年度までに進めた研究を集大成しつつ、さらに日本と欧米の労働法の歴史を突き合わせるうえで補充すべき点(例えば各国の近代化の過程で成文法としての労働法が形成された時代の労使関係の実態の異同など)の研究を行う。本研究の完遂に向けて、Antoine LYON-CAEN教授(パリ西大学)とも引き続き議論を重ねる。これらの研究を総合しつつ、本研究で得られた成果を順次公表していく。
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Research Products
(5 results)