2012 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20530047
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
水町 勇一郎 東京大学, 社会科学研究所, 教授 (20239255)
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Project Period (FY) |
2008-04-08 – 2013-03-31
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Keywords | 労働法 / 比較法 / 労働史 |
Research Abstract |
労働法の歴史についての比較法研究を進めた結果明らかになったのは、日本の労働関係(およびそれを包摂とした日本の労働法)の特徴とその相対性である。 日本の中世や近世においては、一方で、「身分」に基づく固定的な社会が存在し、他方では、「契約」に基づく流動的な社会が存在していた。その後、近代化(工業化)のプロセスのなかでこの両者が混在し、前者の封建的(共同体的)性格を残存させながら、戦後の長期雇用慣行の普及・定着に伴って次第に後者の流動性が失われていった。このような過程のなかで、近代化以降も労働関係の「身分」な性格が相対的に強く残存したことが日本の労働関係の特徴であり、それを現代的な文脈のなかで規範的に解釈し直すことが日本の労働法の重要な課題となっている。しかしながら、近年の欧米諸国の実態や議論をつぶさに観察してみると、これらの国々の労働関係のなかにも企業内の閉鎖的な意識・文化に起因する問題(前近代的または企業組織的な問題)が内在しており、近年その弊害が社会的に問題視されるに至っている。その意味で、日本の労働関係の特徴とそれに由来する問題は、欧米諸国でもある程度共通して観察される相対的なものといえる。そして、この問題がとりわけ顕著な形で指摘され、それに対する法的対応が進められている代表的な例が、EUの2000年均等待遇基本枠組指令とそれに基づくEU加盟国の国内法の整備である。 そのなかで、企業の組織や文化に由来する構造的な問題を根本的に解決していくための新たな制度として、フランスではLe Défenseur des droits、イギリスではEquality and Human Rights Commissionなどが創設されている。これらの新たな制度の研究を進めていくことは、日本の労働関係に内在している「身分」的な問題を構造的に解決していくための手がかりとなりうる。
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Current Status of Research Progress |
Reason
24年度が最終年度であるため、記入しない。
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Strategy for Future Research Activity |
24年度が最終年度であるため、記入しない。
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