2008 Fiscal Year Annual Research Report
心神喪失者等医療観察法における鑑定の適正化および医療の必要性概念に関する研究
Project/Area Number |
20530058
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Research Institution | Josai University |
Principal Investigator |
柑本 美和 Josai University, 現代政策学部, 講師 (30365689)
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Keywords | 2007年精神保健法 / 人格障害 / 治療可能性 / 強制通院治療 / 地域精神医療 / 自傷他害 |
Research Abstract |
イギリス政府は精神保健法の改正に着手し、長い議論の末、2007年7月に2007年精神保健法を制定した。2007年精神保健法は、5つに分類された「精神障害」の定義を廃止し、一つの広汎な定義、「あらゆる精神の障害(any disorder or disability of mind)」を採用した。つまり、人格障害者に関する「治療可能性」の要件は削除され、「看護(nursing)や心理療法(psychological treatment)を含む適切な治療が提供可能」であり、「自傷他害防止のために入院治療が必要」だと考えられれば、その者は入院させられることになったのである。なお、心理療法の中には、怒りのマネージメントや認知行動療法などが含まれる。この改正によって、犯罪を行った人格障害者のみでなく、未だ犯罪を行っていないが他害の危険がある多くの人格障害者が強制入院の対象になりうると考えられている。ただ、実際には、これらの人々を治療の対象とすることには、イギリスでも躊躇が見られるようである。 イギリス2007年精神保健法のもう一つの特色は、Supervised Community Treatment(SCT)制度を導入したことである。これは、主に、一般の強制入院患者、犯罪を行って病院命令を受けている患者でCommunity Treatment Order(CTO)を課されて退院した者に対し、治療条件に従うことを求め、必要があれば強制的に再入院させるものである。CTOを出された患者に対して、どこまで治療条件を課せるのか、どのような治療を求めることができるのか、どのような場合に再入院させることができるのかなどについては、まだよく分からないことが多いので、今後の課題としたい。
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