2009 Fiscal Year Annual Research Report
心神喪失者等医療観察法における鑑定の適正化および医療の必要性概念に関する研究
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20530058
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
柑本 美和 東海大学, 実務法学研究科, 准教授 (30365689)
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Keywords | イギリス精神保 / ヨーロッパ人権条約 / ヨーロッパ人権裁判所 / 被害者・潜在的被害者の人権 / 治療なき拘禁 / 人格障害者 |
Research Abstract |
イギリスでは、人格障害者による幾つかの事件によって、現行の刑事法、精神保健法が人格障害に罹患した危険な犯罪者の再犯防止に無力であること、そして、危険な人格障害者による犯罪防止にも無力であることが露呈されてきた。その結果、危険な人格障害者の不定期収容を確保するための精神保健法改正が行われた。イギリス政府は、この法律がヨーロッパ人権条約(Convention for the Protection of Human Rights and Fundamental Freedoms)に違反するところはないと明言している。それは、ヨーロッパ人権条約における人権視点の変換-精神障害者の人権から精神障害者の加害行為を受ける被害者・潜在的被害者の人権へ-が生じていることに起因していると言える。 その結果、最近の危険な精神障害者の処遇問題において、ヨーロッパ人権条約は、むしろ、患者の人権を制限する道具として用いられているように思われる。それは、 1 ヨーロッパ人権条約が、floorであって、ceilingではないとの言葉に代表されるように、あくまでも最低限の人権保障を確保するために策定されたものであること、 2 「生きた文書(living instruments)であって、今日の状況に照らして解釈されなければならないとされていること、 3 そして、今日の状況が、条約2条を根拠として、被害者・潜在的被害者の人権保護に急速に動き出していること、などから看取できる。こうして行われる鑑定やアセスメントが適正かつ公正であると言えるかについては、更に検討が必要なように思われる。
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