2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20530064
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
松久 三四彦 Hokkaido University, 大学院・法学研究科, 教授 (10142788)
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Keywords | 時効 / 取得時効 / 消滅時効 / 時効期間 / 除斥期間 / 時効の中断 / 時効の停止 / 時効の援用 |
Research Abstract |
本年度前半は、前年度に引き続き、各国の消滅時効法の全体像を研究した。近時の時効法をみると、PECLが、その直後に制定されたドイツ改正民法をはじめとして、その後のPICCやDCFRに大きな影響を与えていることがうかがわれる。全体として、消滅時効法は、主観的起算点による期間の短期化・統一化と執行以外の権利行使型中断事由の停止事由への移行に向かっているが、主観的起算点の短期は客観的起算点による長期との二重期間構成につながり、その内容は多彩である。期間の短期化は、他方で、起算点や、合意による時効規定の排除などにより、債権者保護とのバランスをはかろうとしているが、ここでも、その具体的な内容や法的構成は一様ではない。近時の時効法の大きな動向とともに、権利者保護と義務者保護のバランスの多様さが浮き彫りになったといえよう。このことは、あるべき時効制度を探るうえでの大きなヒントとともに制度設計の多様さと困難さを示している。これは、民法が対象とする人間像、ひいては、民法とは何かというより深い問題にかかわっているためであるように思われる。また、近時の時効法の時効観については、(1)フランス改正民法が、従来の支払い等についての宣誓を求める推定的短期消滅時効の制度(旧2271条~2275条)を廃止したこと、(2)PICCの公式注釈は、いわゆる消滅時効完成後の債務承認によっては時効の抗弁権を失わないとしていること、(3)ドイツ改正民法のように、主観的起算点による短期の時効と客観的起算点による長期の時効との二重期間構成が主流になりつつあるが、この主観的起算点による短期の時効は、権利の存在を認識し行使できるようになった以上短期でも権利を喪失させてよい(履行拒絶されてもよい)とするものであり、全体として権利消滅説に分があるように思われる。これらを踏まえて、起算点、時効期間、時効の効果等の各論的研究をすすめたい。
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