2009 Fiscal Year Annual Research Report
差止請求権の発生根拠に関する考察-環境共同利用権を素材にして
Project/Area Number |
20530073
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Research Institution | Kagawa University |
Principal Investigator |
中山 充 Kagawa University, 法務研究科, 教授 (60093910)
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Keywords | 差止請求権 / 環境共同利用権 / 里海 |
Research Abstract |
まず、差止請求権に関連する民事法及び環境法に関する文献を収集・分析し、公害差止請求に関するリーディングケースである国道43号線・阪神高速道路騒音排気ガス規制等請求に関する最高裁平成7年7月7日判決の考察を、まとめ発表した(平成21年4月)。次いで、諫早湾干拓地堤防撤去・排水門常時開放請求に関する佐賀地裁平成20年6月27日判決に関する文献を収集して、考察を進めた。 他方で、自然科学など広範な分野の研究者が「里海」について議論する会議に参加(平成21年10月)し、また、文献の分析を進め、「里海」の実現と漁業権、環境共同利用権をめぐる法的課題について考察をいっそう深めた。その成果を「里海と環境共同利用権」と題して日本海洋学会沿岸海洋研究部会において報告し、自然科学研究者との間で議論を行った(平成22年3月)。 また、鞆の浦埋立免許差止め請求に関する広島地裁平成21年10月1日判決について、原告等の報告聴取、文献収集及び考察を行った。この判決は、歴史的景観を侵害する海浜埋立ての差止の請求を認容した画期的判決である。行政訴訟判決であるが、民事上の差止請求権を考察するためにも重要な意義を持つ。 さらに、干潟の保全と利用について現地調査を行い、関係行政職員からヒアリングを実施し、干潟の保全と利用に関する法制度について考察した。 以上の研究は、具体的な事例を分析の対象にしつつ、差止請求権の一般理論の検討を深化するものであり、差止請求権の一般理論にとって有意義な成果を生み出すものであり、かつ、環境共同利用権に基づく差止請求権の根拠及び要件の明確化に向けた重要なステップの形成をいっそう進めるものであるという意義を持つ。
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Research Products
(2 results)