2010 Fiscal Year Annual Research Report
損害賠償請求権の時間的制約をめぐる法解釈論・法政策論・立法論の日独比較研究
Project/Area Number |
20530079
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
松本 克美 立命館大学, 法務研究科, 教授 (40309084)
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Keywords | 消滅時効 / 除斥期間 / 民法改正 / アスベスト被害 / 欠陥住宅 / シックハウス症候群 / 共同不法行為 |
Research Abstract |
本年度は、法制審議会・民法(債権関係)部会で現在審議中の民法典における時効法改革に関連して、民法改正の視点や内容を批判的に検討し、民科法律部会合宿研究会で報告した(2010年8月)。そこでは、とりわけ、時効法改革の必要性につき、現行民法典の時効期間が多様であることだけを理由に統一するというのでは、改革の必要性としては不十分であり、また、安易な時効期間の短期化は、既存の権利保護を後退させることになり、妥当でないことを強調した。 また、消滅時効・除斥期間が訴訟上の大きな争点となってきた戦後補償訴訟、とりわけ従軍慰安婦訴訟と時効・除斥期間の問題につき、女性・人権・平和学会で報告を行った(2010年6月)。そもそも人道に対する罪にあたるような重大な人権侵害につき、単に時の経過をもって権利を消滅させることの不当性を、時効・除斥期間の存在意義論との関係で理論的に根拠づけた。 更に、長期を経て被害が顕在化することにより、消滅時効や除斥期間が問題となり得る、アスベスト被害やシックハウス被害などを含む欠陥住宅被害につき、責任論、因果関係論、共同不法行為責任論などもふまえて検討を行った。アスベスト被害については、日本における従来のアスベスト訴訟を概観し、訴訟類型や争点の特徴などを整理し、今後の課題として、建材に使用されたアスベスト被害が長期を経て顕在化することの危険性とその際に問題となり得る建物所有者の無過失責任、建物賃借人の被害救済などを検討した。また、首都圏建設アスベスト訴訟で争点となっている建材メーカーらの共同不法行為責任、国とメーカーの共同不法行為責任について問題の所在と法解釈のあるべき方向につき検討するとともに、関連する重大な理論的問題点としての共同不法行為責任における侵害者の特定問題につき検討した 2011年2月には、ドイツのペルリンにおいて、ドイツにおける時効・除斥期間論関係の文献・資料を収集した。
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Research Products
(4 results)