2008 Fiscal Year Annual Research Report
アメリカ環境法制における省庁間政策調整の法理と実際-NEPAシステムの包括的研究
Project/Area Number |
20530086
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Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
及川 敬貴 Yokohama National University, 大学院・環境情報研究科(研究院), 准教授 (90341057)
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Keywords | 国家環境政策法 / 省庁間調整 / 環境諮問委員会 / ルーズベルト / ブローカー政治 / 保全省 / 魚類・野生生物調整法 / ニューディール |
Research Abstract |
平成20年度は歴史分析を進め、国内外(ハワイ大学など)で1次・2次資料を収集し、環境をめぐる権限の分散と省庁間紛争の頻発という課題に対して、フランクリン・ルーズベルト政権期の執行部と連邦議会が、いかなる制度的対応を図ったのかを検討し、次のような知見・示唆を得た。(1)当時の執行部は、いくつかの省庁を統合した保全省と大統領府レベルでの諮問委員会の設置をめざしたが、前者は既存の省庁の反発を招き、現実の存在とはならず、後者は国家資源計画委員会として制度化をみたものの、その後議会によって廃止に追い込まれてしまった。とくに後者の歴史については、連邦議会が大統領への権力の集中を嫌った結果であるともいえるが、他方、特定の資源に関する権限や予算を持たない行政機関を支持することが議員にとってのインセンティブにならない、すなわち、「特定の政治的constituencyを持たない」という調整機関の特性を示唆するものであった。(2)一方、連邦議会は、新たな行政機関の創設ではなく、調整の手続(協議)を法律に書き込むという方策を支持し、テイラー放牧法や魚類・野生生物調整法に関連規定が取り込まれた。しかし、かかる協議は、当該制定法のシステム内で、かつ、通常の省庁のみを対象として作用するものであったことから、この仕組みに対して高い評価はなされていない。(3)このように、具体の施策が提案・実施されたという点で、ルーズベルト政権期の制度的対応は、統合(環境保護庁の設置)や調整(環境諮問委員会の設置)の「萌芽」として理解しうるが、それらに対する積極的な評価は少なく、むしろ、その機能不全がニューディール期を形容する「ブローカー政治」システム、すなわち一層の分散を招来する可能性のある政治システムが醸成された要因の一つであることが明らかとなった。
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Research Products
(3 results)