2009 Fiscal Year Annual Research Report
マイノリティ女性に関する政策と制度の比較研究―複合差別の視点から
Project/Area Number |
20530093
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Research Institution | Osaka Jogakuin College |
Principal Investigator |
元 百合子 Osaka Jogakuin College, 国際・英語学部, 准教授 (40411756)
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Keywords | マイノリティ女性 / 複合差別 / 英国 / フランス / 植民地支配 / 移民政策 / 女性政策 / 文化的異質性 |
Research Abstract |
マイノリティ女性を対象とする政策を策定・実施してきた調査対象国5カ国のうち、初年度におこなった英米法圏のオーストラリアとニュージーランドの調査に続き、当該年度はEU加盟国である英国とフランスについて文献・資料およびインターネットによる情報収集と現地調査を実施した。移民女性・移住労働女性を中心に両国のマイノリティ女性の社会的・経済的状況と直面する問題、法制度や行政サービス等について、関連する政府機関、地方自治体、NGO研究者に聞き取り調査をおこなった。両国とも植民地支配に関連して形成されたマイノリティに加えて、欧州統合の過程で増加した域内諸国出身のマイノリティという二種に大別、分類できるマイノリティを抱え、人種的文化的複合社会として様々な問題に取り組んできた。それぞれに独自の制度を発展させてきており、調査によって、制度の類似性と相違点、効果的な施策と実効性に乏しい措置などを比較検討することができた。両国とも、「複合差別」の概念が行政に浸透しているとは言い難く、基本的には縦割り行政の中において移民政策と女性政策は別々に策定され、実施されてきたが、我が国に比べて移民・移住労働を受入れてきた歴史が長く、国籍法き血統主義を採用していないため、国籍を取得して永住した移民女性・移住労働者女性とそれら当事者に近いNGOが多数あり、活発・強力に政策提言活動を行ってきたことが、法制度を含めた各種制度や行政に一定程度反映し、結果的に複合差別的状況に対応する部分もあり、マイノリティ女性たらは多少の恩恵を受けている。ただ、両国ともに、非正規滞在、非正規就労の移民女性・移住労働者女性は、そうした枠組みの外にあり、低所得者層を形成し、住居、労働、教育、医療など生活のあらゆる面で多大な困難に直面している。また、英国は早くから多文化主義を採用してきた一方、フランスは国際人権法上のマイノリティの国内存在を認めず、レイシテを国家原則として採用していることによる文化的異質性に対する許容度と保護政策には大きな開きがあり、それが女性たちにとっても重大な問題を引き起こしていることが、調査によって具体的に把握することができた。
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Research Products
(8 results)
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[Presentation] 宗教と人権2009
Author(s)
元百合子
Organizer
大阪女学院大学国際共生研究所 平和・人権研究会
Place of Presentation
大阪女学院大学
Year and Date
2009-11-18
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