2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20530097
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Research Institution | Fukushima University |
Principal Investigator |
大黒 太郎 福島大学, 行政政策学類, 准教授 (20332546)
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Keywords | 政治学 / 極右政党 / 福祉制度改革 / オーストリア政治 / 比較政治学 |
Research Abstract |
1)右派連合政権の年金・医療制度改革の実現プロセスのなかで右派政党が果たした役割を確定するという目的については、政権参加を果たした「極右」政党内部の組織的・制度的変化と連合政権内の交渉プロセスに焦点を定めて分析済みである。(1)「極右」政党の政権参加によって、右派国民政党の脆弱性が克服され、より安定的な政権運営が可能になったことを通じて改革のための政治的基盤が強固となったこと、(2)「強い国家と市場」という組み合わせという形で政策的方向性を決定づけたことが、「極右」政党参加の政策的インパクトとして確認できること、(3)この特徴は、オーストリアのみならず、研究対象としたイタリアやオランダにも(国ごとの特徴は無視できないが)概ね確認できた。 (2)政権による政策的方向性の明確化とともに、それとは矛盾するように思える政治変化の潮流が生み出されつつあることが確認できた。その第一は、「極右」政党弱体化の潮流である。野党時代と政権与党時代の「極右」政党は、リーダー選択、党内運営、対他組織関係のあらゆる面で異なっており、福祉制度改革の方向性の明確化とともに、その政治的基盤が掘り崩されるという現実が明らかとなった。極右政党は、得票最大化を追求する「批判政党」として得た成果を、政策遂行の責任を負う「政権政党」によって失いつつある。このことが、極右政党のアイデンティティ・クライシスと連合の不安定化をもたらした。 (3)新たな潮流の第二は、極右政党の連立相手となった右派国民政党の復活とそれを通じた政権の弱体化というディレンマである。極右に票を奪われる基盤を崩すことによって有利な地位を得た右派国民政党は、党として復活を果たしたが、連合相手の不安定化と不人気な政策の実施によって、政権基盤を維持することが極めて困難であった。右派連合政権による福祉制度改革は、その特徴は明らかなものの、その実現のプロセスにおいては、政権運営上の必要性から多くの妥協がなされたことが明らかとなった。
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