2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20530101
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
森 聡 法政大学, 法学部, 教授 (60466729)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
安井 宏樹 神戸大学, 法学研究科, 准教授 (60396695)
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Keywords | 比較政治 / ドイツ政治 / ヨーロッパ政治 |
Research Abstract |
研究最終年度として、内政・外交の両面からドイツ政治の変容に関する成果がまとめられた。とりわけ、シュレーダー政権を画期とする変容が、双方に共通して見出されたことが注目される。これらの知見は「ヨーロッパ化」の理論にも着実な貢献をもたらすであろう。 1.内政における変容:統一後の変化を象徴する事例として、シュレーダー政権による社会保障・労働市場政策の改革が研究された。そこでは(1)ドイツの「保守主義型」福祉国家の性格を「自由主義型」の方向へ大きく変えようと試みたという内容面での変化にとどまらず、(2)戦後ドイツ政治の通奏低音となってきた合意志向型政策決定からの離脱という政策過程の面でも注目すべき変化を伴っていたことが確認された。また、「ヨーロッパ化」に関連して(1)通貨統合に伴って締結された財政安定成長協定による財政赤字制約が改革の原動力となっていたこと、(2)欧州委員会からの期限付き勧告が通例の政策決定枠組みからの離脱を正当化したことなどに決定的に影響していたとの知見を得た。 2.外交における変容:シュレーダー政権の安全保障・対外政策が分析され、NATOやEUといった枠内における「多角協調優先型」の対外路線を維持しながらも、政権一期目の後半以降は、イラク戦争への対応等、そうした枠にとらわれない対外政策も推進しようとしたという変化が特定された。「ヨーロッパ化」の視角からは、たとえば(1)EU軍事委員会、EU軍事スタッフ、政治安保委員会等が設置されたものの、依然として政府間協議はブリュッセルではなく、関係国の首都間で行われており、《ダウン・ロード》の効果には限りがあるが、(2)南東欧安定化協定の策定の際にドイツのフィッシャー・プランがその基礎を成すなど、《アップ・ロード》の取り組みが徐々に成果を上げていることが確認され、両ダイナミクスのバランスに変化が生じつつあるとの知見を得た。
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Research Products
(2 results)