2009 Fiscal Year Annual Research Report
国境を越える財移転の倫理的根拠とその政策デザインのための哲学的・理論的研究
Project/Area Number |
20530102
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Research Institution | Nagoya City University |
Principal Investigator |
伊藤 恭彦 Nagoya City University, 大学院・人間文化研究科, 教授 (30223192)
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Keywords | 政治学 / グローバルな正義 / 国際公共政策 / 貧困 / 構造的暴力 / コスモポリタニズム |
Research Abstract |
平成20年度の研究によって、富裕国から貧困国への財移転の正当性について解明した。平成21年度は、貧困地域以外の地域への財移転が正当とされる場合の倫理的根拠を解明した。その根拠とは経的格差が社会的な力の格差に転移し、「構造的暴力」として弱者を不遇な状態(経済的搾取の対象、物理的暴力の対象、自己の能力を発展させる機会の喪失など)に置くならば、その人々と構造的にっながっている国々は、その除去のために財を移転しなくてはならないというものである。てらに国境を越える哲学的思考の典型として、近年、学術的にも解明が進んでいるコスモポリタニズムについて、現在の代表的な議論ならびにその思想的源流の一つである古代哲学(ストア派と古代ローマ期の哲学)の主張について、その内容を整理した。 これらの点を平成21年度は解明し、論文化し、平成22年の研究成果とあわせて発表する予定である。また、ここまでの研究成果を政治思想学会シンポジウムで発表し、関連研究者からいくつかの術的コメントをもらい、研究成果の中間的到達点を確認した。 平成20年度と21年度の研究成果で、国境を越える財の移転を正当化する重要理由が解明できたことになり、国民国家という枠組みを越える分配政策の根拠が明ちかになったと言える。 以上の成果をより具体的な公共政策につなげ、現代の政策課題を明らかにすることが平成22年度の課題となるが、それに関連してJICA(国際協力機構)へのヒアリング調査を行い、日本のODA政策の現状と課題について予備的な調査を行った。
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