2008 Fiscal Year Annual Research Report
東中欧諸国における市民社会の比較研究:自発的結社の政治的役割
Project/Area Number |
20530103
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
中田 瑞穂 Nagoya University, 大学院・法学研究科, 教授 (70386506)
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Keywords | 市民社会 / 政党政治 / 東中欧 / 新民主主義国 / 民主化 / ガヴァナンス / EU / 公共圏 |
Research Abstract |
1.初年度である20年度は、二次文献、国内で入手可能な一次史料の収集から作業を開始した。これらの文献・資料に基づき、 (1)体制転換後の市民社会組織の特色、(2)EUが期待する市民社会組織の役割、(3)社会主義化以前の歴史的前提の二点の解明を進めた。 まず、(1)に関しては、体制転換後の市民社会組織は量的に増加しているが、会員のいないスタッフ中心の組織が多く、加盟員数はむしろ減少していることが明らかになった。資金面に注目しても、市民社会組織に対する市民の寄付の割合が少なく、国家(中央、地方政府)、EU、国外の寄付者(財団など)の資金に依存する傾向がある。 (2)に関しては、EUの文書の分析を通じ、EUが中東欧諸国の市民社会組織に期待するのは、市民社会組織の政策決定への参加によって、ガヴァナンスの改善をはかることであることを明らかにした。実証研究を進めるために、(1)市民社会組織を通じての大文字の政治の場へのアクセス、(2)公共圏の構築、多層化、拡大の二点を考察点として抽出し、調査対象としては、外国人労働者支援市民社会組織とジェンダー市民社会組織に絞り込むこととした。(1)と(2)については、下記の口頭報告「チェコ共和国における市民社会組織の政治的機能」及び、共著『ヨーロッパのデモクラシー』の担当章の一部としてまとめた。 (3)に関しては、チェコスロヴァキア、ポーランドを対象に、市民社会組織と政党政治の連関に関して、社会主義化以前の歴史的前提を解明する研究を行い、成果を「議会制民主主義への突破と固定化-経路、課題、結果」の(1)と(2)にまとめた。この結果、中欧地域では、市民社会組織は非常に高い密度で、マイノリティ、農民、キリスト教徒、労働者といった社会集団ごとに組織化されていたことが明らかとなった。これらの社会集団を政治社会で代表する政党が存在するために、市民社会組織が政党を通じて政治社会に結びついており、市民社会組織は政党間の代議政治と連動して政治的役割を果たしていた。 2.さらに実証的に研究を進めるために、チェコにおいて、文献、資料を収集するとともに、上述の(2)で抽出された論点(1)(2)に沿って、市民社会組織のインタヴューを行い、(1)と(2)の具体像を明らかにした。(1)は、評議会、議員個人への働きかけ、プラットフォームの形成であり、(2)については、言論空間、図書・情報収集、研究会、啓蒙活動(講演会、講習会、出版、HP)を通じての分野別の「公共圏」の形成である。本調査の実施が年度末であったため、成果を年度内にまとめることはできなかったが、次年度にこのインタヴューの成果を盛り込んだ論文を執筆する予定である。
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