2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20530109
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Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
宗前 清貞 琉球大学, 法文学部, 准教授 (50325825)
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Keywords | 政策過程 / 専門情報 / 医療政策 / 公立病院改革 |
Research Abstract |
今年度は研究の最終年度であり、これまで進めてきた研究を継続するとともに、とりまとめを意識して研究を実施した。 まず、昨年来続けていた福島県の病院改革に関する資料収集を福島県立図書館で複数回行った。当該自治体でのヒアリングは拒絶されているので(理由不明)、図書館に所蔵されている地元二紙のデジタル縮刷版から関係記事を抽出し、改革の進展について全体像をつかむよう心がけた。 また、戦後日本の医療システム構築(具体的には病院システム構築に関する制度史)について、歴史的な視座からの知見を収集するよう努めたが、これについては文献による情報収集とそのとりまとめにとどまった感がある。ただし、明治維新前からの歴史的連続性について重要な認識を得られたことは、戦後医療制度とこんにちの医療システム改革の連関について立体的な関連を見出し得た点で有益だった。 この点については、北山俊哉氏(関西学院大教授)や砂原庸介氏(大阪市大准教授)との意見交換や勉強会を通じて、主として保険制度の問題点と関連させて医療システム理解を深めることができたことが収穫である。具体的には(1)保険制度の歴史的転換点が戦前にあったこと(2)現在の日本の保険制度が「保険」機能という点で逸脱していること(3)そうした逸脱に対して、サービス供給者である医療システムの側の問題が大きく関係していること(4)医療サービス価格である診療報酬設定についてはなお解明が不十分であること、などが指摘できる。従って、申請者の研究である「専門情報の強度」が政策決定過程で果たす役割として、専門情報を有しているサービス供給者が一義的に優位に立つとは言えないが、強い影響力を持っていることは間違いなく、ただしそうした状況の制約要因として歴史的・財政的状況に強く拘束されることが理解できた。
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