2008 Fiscal Year Annual Research Report
韓国の自由貿易協定をめぐる国内政治-社会経済政策と外交安保政策の交錯
Project/Area Number |
20530113
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Research Institution | Gakushuin University |
Principal Investigator |
磯崎 典世 Gakushuin University, 法学部, 教授 (30272470)
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Keywords | 政治学 / 韓国政治 / 自由貿易協定 / 韓米FTA / 東アジア国際関係 / 地域秩序形成 / 新自由主義 / 多国間主義 |
Research Abstract |
本研究の目的は、韓国のFTAをめぐる国内政治に焦点をあて、社会経済システムの変化、および対外戦略変化の過程を明らかにすることである。 研究初年度の本年度は、政府など各種機関、新聞報道、国会審議録、先行研究などのFTA関連する一次・二次資料の収集・整理を中心に行い、以下のような成果を得た。第一に、歴代政権のFTA政策の展開を整理した。その結果、FTA政策の変化は、「グローバリズムに対応する社会経済政策」および「外交・安全保障政策」という政策の方向性の変化によって説明できることが明らかになった。その成果を、金大中政権期のFTA推進開始と盧武鉉政権の韓米FTA推進という2つの転機に焦点をあて、論文にまとめた(2009年5月ごろ出版予定)。第二に、韓チリFTAと韓米FTAの批准過程に焦点をあて、FTAをめぐる国内対立を検討した。前者は、韓国初のFTAで批准が難航し、後者も、2007年の妥結後、批准が難航している。研究の結果、韓チリFTA批准をめぐる政治と帰結が、その後のFTAをめぐる国内政治の方向性を規定した部分や、その批准をめぐる対立が同時期の韓日FTA交渉での韓国側の姿勢に影響を与えた部分などが明らかになった。また、2008年の米国産牛肉輸入反対運動と韓米FTA反対運動が必ずしも直結していないことから、この2つの運動が同じ範疇のものとして捉えられていない理由を検討することで、韓米FTAをめぐる議論の位相を再確認した。しかし、作業はまだ進行中で、次年度の研究に継続して発展させていく。 本研究は、FTA政策を社会経済政策と外交・安全保障政策という2つの側面をもつ政策として捉え、FTA政策過程の分析を通じて、2つの政策の方向性をめぐる国内政治を総体的に解明している。韓国政治のみならず、グローバリズムに対応する政治の比較、東アジア国際関係という分野においても意義をもつ研究である。
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Research Products
(1 results)