2009 Fiscal Year Annual Research Report
韓国の自由貿易協定をめぐる国内政治-社会経済政策と外交安保政策の交錯
Project/Area Number |
20530113
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Research Institution | Gakushuin University |
Principal Investigator |
磯崎 典世 Gakushuin University, 法学部, 教授 (30272470)
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Keywords | 政治学 / 韓国政治 / 自由貿易協定 / 東アジア国際関係 / 地域秩序形成 / 多国間主義 / 日韓FTA / 韓米FTA |
Research Abstract |
本研究の目的は、韓国のFTAをめぐる国内政治に焦点をあて、社会経済システム変化と対外戦略推移の過程を明らかにすることである。 今年度は、まず、韓国のFTAに関する一次・二次資料を検討して、FTA政策の対外政策側面と国内政策側面を明確にすると同時に、政策転換の要因を検討する研究を進め、成果の一部を論文にまとめた。 「韓国におけるFTA戦略の変遷-多国間主義の推進と挫折」では、政府の戦略転換に焦点をあて、金大中政権下でFTA推進が開始された理由、および、日韓FTAを重視した盧武鉱政権が重点を移して韓米FTA締結に至った理由を、グローバリゼーションに対応する社会経済政策という側面と、東アジアにおける秩序構築のための外交安保政策という側面から解明した。特に、後者に関しては、金大中政権で開始された多国間主義的な新秩序構築の試みが挫折して二国間同盟重視へ回帰する過程を、在韓米軍再編問題とも関連づけて論じた。 他方、政府の構造改革への労働団体や農民団体の対応を中心に、FTAによる社会経済システムの変化をめぐる国内政治についての研究を進めた。市場原理を優先する政策に対する労働団体・農民団体の対応は一枚岩ではなく、FTAへの諸団体の対応やFTAをめぐる対立は、民主化後の韓国政治の文脈に位置づける必要が明らかになった。この成果の一部は、労働運動を分析した論文に反映されている。 以上のように、本年度は、地域秩序構築という対外政策と新たな社会経済システムの構築という国内政策の2つの側面をもつFTA政策を、いくつかのレベルで分析し論考としてまとめた。これらの成果は、韓国政治の実証分析であると同時に、グローバリゼーションへの対応の比較研究や地域秩序構築という分野の研究にも寄与するものである。次年度は研究を発展させ、これまでの個別の分析を統合し、より総合的な分析を試みたい。
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Research Products
(2 results)