2010 Fiscal Year Annual Research Report
近代日本における「団体」法理論の受容とその政治思想的意義
Project/Area Number |
20530118
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Research Institution | Rikkyo University |
Principal Investigator |
松田 宏一郎 立教大学, 法学部, 教授 (50222302)
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Keywords | 団体 / 自治 |
Research Abstract |
最終年度として、中間団体に期待される自己統治能力と国家の全体秩序との関係がどのように理論化されていったのかについて、論文のとりまとめと、主として海外の研究機関でいくつかの研究発表をおこなった。論文は2011年度中に公刊される共著2冊に収録を予定している。 この研究では、近代における「団体」理論の構築にあたって、近世から用いられる「旧慣」を鍵概念とした秩序意識と、明治期からよく用いられるようになる「自治」という概念の関連を検証した。この概念の継承関係は、人々が一定地域や職能団体の秩序などを「自治」的に管理する能力の養成が、法秩序の形成の面からも明示的に要請されてきたこと、またこの秩序意識が「アジア的」な遅れた社会段階から脱する道筋を示すものとして政策的に唱導される面があったことが明らかになった。また、この過程で「公・私」の概念と「団体」による「自治」という概念が相互に連関を持つようになった。「団体自治」は「公私」を媒介するものとして、保安や政治的安定などのセキュリティ問題から、経済的利益を協同で守るための組合などの奨励、個人の人格的自己陶冶といった教育的課題にいたるまで政治・法秩序の社会的mores(慣習)を形成する芯をなすものとされた。「団体」はそれ自体、権利能力主体とされるが、同時に個人の政治的責務を実際的な行動へ具現化するトポスとしての意味ももたされ、近代の政治・法理論の中で整合的に論ずることにさまざまな困難を示した。さらには、そもそも国家とは「自治」組織の集合体であるのか、それ自体一つの「自治」組織であるのか、また日本の支配する植民地地域の社会にどれだけ「団体」としての法的権利能力を認めるのか、あるいはそのような社会的実態を発見するのかといった政治体制全体にかかわる理論が、多彩かつ内部に矛盾をはらんだ理論の束としてアカデミズムおよび政策アリーナの中で競合したことを、具体的な思想家・著作に即して明らかにした。
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Research Products
(5 results)