2010 Fiscal Year Annual Research Report
政治学的概念の世論調査による測定に関する認知科学的研究
Project/Area Number |
20530123
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
西澤 由隆 同志社大学, 法学部, 教授 (40218152)
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Keywords | 政治学 / 世論調査 / 認知科学 / 政治的信頼 / ランダマイゼーション |
Research Abstract |
本研究の目的は、1)社会科学のツールとしての世論調査について、認知科学的な視点からその問題点を再検討する。そして、2)そのことをつうじて、それがより信頼性の高いツールとして応用が可能となるように、具体的な提言をすることであった。より具体的には、「政治的信頼」に関する意識の測定方法について、Web調査を利用して、評価項目のランダマイゼーションの是非を検討した。 コンピュータを利用した意識調査では、評価項目のランダマイゼーションが一般的である。そのことで、評価項目の順序によるバイヤス(順序効果)が、集計値としては排除される。ところが、個人単位で見たときには、そのことにより、質問の「reliability(信頼性)」を損ねることが判明した。「アンカリング」により、第2項目以降の評価は、第1項目の回答に影響を受けるからである。それに対処すべく、1)最初に提示される評価項目を「本人の最高・最低評価項目に固定」する質問方法や、2)最初の2項目について、「共通の最高・最低評価項目で固定」する評価方式などを試みたが、必ずしも想定した改善効果が見られなかった。 本研究の結論は、「1)質問形式の操作でアンカリングの効果を排除するのは難しい。したがって、2)ランダマイゼーションは選択的に利用される必要がある」である。アグリゲートな意見分布の測定であればランダマイゼーションが有効である。一方、パネル調査のように、個人単位での意識変化に関心がある場合は、順序効果という制約があっても、あえてランダマイゼーションをしない方が良いことが確認できた。
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