2010 Fiscal Year Annual Research Report
日露関係における対立から協調への転換についての総合的研究
Project/Area Number |
20530135
|
Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
寺本 康俊 広島大学, 大学院・社会科学研究科, 教授 (00172106)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
ユリア ミハイロバ 広島市立大学, 国際学部, 教授 (00285420)
|
Keywords | 日露関係 / 外交 / 世論 / 日英米関係 / マス・メディア |
Research Abstract |
平成22年度の研究は、日本、ロシア、イギリスの国立公文書館に加え、アメリカの国立公文書館も訪問し、日露戦争期から第1次世界大戦期までの日露関係の変容を中心に、日英、日米、米露外交関係をも調査した。 外交関係では、イギリス国立文書館で、日英同盟の強化が日露間の接近を促したこと、ロシア側で日露間の接近を強く希望し、その意向はイギリス側にも伝えられ、英露協商交渉の成立の前提として日露協商の成立が考えられること、また、フランスに対しても、日本のパリでの公債募集について日露関係の改善、協商成立が条件とされるなどなどが外交文書で判明した。また、アメリカ国立公文書館でも、当時のアメリカ政府が満州での日露間の力のバランスの変化や日本の排他的な政策を注視していたことなどが確認できた。また、ロシア帝国外交史料館で保管され、これまで未公開だった外交資料の中で、在日ロシア駐露公使バフメーテフとロシア外務省との報告内容、つまりラムスドルフやイズヴォルスキーなどのロシア外相の対日接近政策などが指示されていたことなどが判明した。ロシア関係では、アメリカ国立公文書館でも、米国国務長官は、アメリカが強い関与を持とうとしていた満州市場を日露両国が分割するのでないかという懸念から、日露協商の秘密条項の存在に強い関心を持っていたことを確認した。 また、日露関係をもっと広い文脈から検討するために、当時のマス・メディア、世論を分析した。マス・メディア、世論が外交に与えた影響では、当時のロシアの新聞などを丹念に調査した結果、日露交渉の展開についてロシアの新聞間の論争が大きな影響力を持ち、外交政策問題がロシア国会ドゥーマの審議事項になり、世論に配慮する形で外交政策が決定されることになったこと、さらに日露交渉が新聞に掲載されることによって、日本という国自体にも関心が向けられ、これまで「エキゾチックな日本」「敵対的な日本」というイメージが薄められ、同等な国としてみることを可能にしたことが判明した。 このように、研究対象時期に於いて、日露関係の変容を両国の外交、両国を取り巻く国際関係、マス・メディア、世論という側面から、分析、検討を加えた。
|