2008 Fiscal Year Annual Research Report
朝鮮分断の構造形成に関する研究(1950〜1960年)
Project/Area Number |
20530136
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Research Institution | Saga University |
Principal Investigator |
森 善宣 Saga University, 文化教育学部, 准教授 (80270156)
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Keywords | 朝鮮戦争 / 朝鮮労働党 / 金日成 / 金〓奉 / 朴憲永 / スターリン / 毛沢東 / 李承晩 |
Research Abstract |
本年度は、交付申請書の「研究の目的」および「研究実施計画」に記した米国立記録保管所(National ArchivesII)における資料の調査ならびに収集を通じて、これまで日の目を見ることのなかった貴重な米防諜隊(CIC)ならびに米国務省関連の記録を入手できた。 この記録は、南北朝鮮に潜入した米陸軍防諜隊(Counter Intelligence Corps)の情報収集活動を基に、韓国内の動きはもちろんながら朝鮮戦争と前後する北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)の内部情報を克明に伝えており、第一級の史料価値があると評価できる。 特に、北朝鮮における金日成の権力掌握過程について従来の通説を覆す重要な発見を得ることができた。すなわち、記録によれば金日成は、研究代表者が拙著『6月の雷撃:朝鮮戦争と金日成体制の形成』社会評論社、2007年、で指摘した朝鮮戦争直後の8月ではなく戦争停戦後に開催された1953年8月の第6次党中央委員会で初めて党中央委員長に就任していた。この時の記録は、その情報を伝達した北朝鮮内部の通報者(スパイ)までも明示しており、その信憑性が極めて高いと信じられる。その時点までは、金〓奉が党首だった。 この発見は、従来の朝鮮労働党の権力構造に対する認識を完全に塗り替え、金日成が朝鮮戦争と前後する時期に実権を掌握できていなかっただけでなく、むしろ開戦や党内粛清など一連の政治行動を実権の掌握という観点から行ったことを強く裏付ける意義があると言えよう。今後はロシア資料の調査で更に確証を求めることができれば、北朝鮮での分断構造の形成過程を史実に沿って確定して再構成する道が開かれることになり、平成21年度に予定しているモスクワの記録保管所(Arhief)における資料の調査と収集へつながっていく。
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Research Products
(4 results)