2010 Fiscal Year Annual Research Report
南アジアの越境水資源をめぐるガバナンスと人間の安全保障
Project/Area Number |
20530145
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
大倉 三和 立命館大学, 国際関係学部, 准教授 (30425011)
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Keywords | 人間の安全保障 / 水セキュリティ / 水ガバナンス / 国際河川 / 統合的水管理 |
Research Abstract |
本研究の目的は、(1)「水の安全保障」・「水ガバナンス」概念と、それらをめぐる政策議論の問題点、また「統合的流域管理」モデルのガバナンス分析枠組みとしての限界を検討したうえで、(2)バングラデシュのガンジス河下流域農村における水のインセキュリティの実態と、それに対する人々のセキュリティ実践の事例に関する分析・検討から、(3)途上国社会の実態に即した水ガバナンスの分析枠組みを提案することにある。 本年度の(1)理論研究においては、昨年度末までに検討した「水セキュリティ」「水ガバナンス」概念に関する議論と問題点を踏まえ、バングラデシュの国際河川下流域におけるボトム・アップの水ガバナンスを素描し、既存の概念と分析枠組みで説明できない諸要素の重要性について、本学国際地域研究所「途上国研究会」にて報告した(5月17日)。その後、開発社会学の鍵概念"actororiented perspective"に立脚したinterface分析について、ボトムアップ方向の水ガバナンス分析への適用可能性を検討した。 (2)現地調査(8-9月):昨年度3月に予定していたが公務の都合により延期した最終調査である。ローカルな水ガバナンスの重要側面として、在来の水環境管理技術(感潮河川管理)が政府事業に正式採用されるまでに関与した複数の住民組織、野党勢力、村落レベル自治体首長、非政府組織との関係を明らかにするとともに、同技術の気候変動適応策としての有効性、その迅速な実施を阻害する要因を明らかにした。 この調査結果については、「参加」が形骸化した現行の住民参加制度の大幅な見直しに関する提言を含め、平成22年度JICA集団技術研修「気候変動による洪水対策と生態系保全のための順応的流域管理」に講師として招聘を受けた際に報告・提言し、バングラデシュから参加する水開発局技術者との意見交換を行った。
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