2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20530155
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
春山 鉄源 神戸大学, 経済学研究科, 教授 (70379501)
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Keywords | 国際貿易 / 異質企業 / 経済成長 / 技術進歩 / 貿易自由化 |
Research Abstract |
本研究の目的は主に4つあり、今年度は先ず以下の二つに注目した。 (3)生産性の事前的分布の違いに基づく比較優位が内生的に発生するモデルの構築(4)企業の生産性、成長率などに対する貿易自由化の効果に関する新しい知見の創出目的(3)に関しては、有意義な結果は得られなかった。一つの理由として、以下が挙げられる。既存研究では、経済間に対称性が仮定されており、これが崩れた場合には分析の難易度が高くなる。目的(3)も同じ理由により、分析可能なモデルには発展できなかった。一方、目的(4)に関しては、非常に有意義な進歩が得られた。例えば、企業による生産性水準の事前的分布を内生化した場合を考えよう。ここでの「内生化」とは企業の利潤最大化行動により、生産性の事前的分布が決定されるという意味である。 この場合、関税率の減少などは事前的分布の決定に何の影響も与えないことが明らかになった。即ち、貿易自由化により起こる企業の生産性分布の変化は、事後的な分布の変化によるものである。これは、既存研究で使われる外生的な生産性の事前分布の過程を正当化する結果である。また、目的(4)に関する結果以外に、本研究課題から派生した研究も行った。第1に、財の模倣が、貿易自由化後に経済成長が促進される一つのルートになる事を示した。第2に、R&D企業の生産性の異質性を取り入れた部分均衡モデルを構築した。この二つのアプローチは、既存研究には無い考え方であり、更なる研究により様々な知見(例えば、特許の影響)の創出につながることが期待できる。
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