2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20530162
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Research Institution | Hosei University |
Principal Investigator |
鈴木 豊 Hosei University, 経済学部, 教授 (20277693)
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Keywords | ミクロ経済学 / 契約理論 / 企業理論 / ガバナンス / 財政学 |
Research Abstract |
「コーポレートガバナンス」の概念を、「企業の利害関係者(ステークホルダー)間に存在する様々な外部性を内部化し解決する仕組みの総称」と捉え、「契約理論+ゲーム理論」の分析ツールを用いて、ガバナンスの仕組みの本質を明らかにする研究を行った。アイディアは「ガバナンス論」一般に応用可能であるため、積極的にアイディアを発展させる研究も進めた。具体的には次の4つに取り組んだ。 (1)企業の統合vs.非統合、集権化vs.分権化の比較経済理論 (2)企業統治への「監査制度」のインパクトに関する3層エージェンシーモデルによる分析 (3)ホールドアップの動学モデルと、「契約の不完備性」への新たな基礎付け (4)欧州連合(EU)における集権・分権とインセンティブ問題:契約理論の視点(安定成長協定とユーロ圏財政ガバナンスを題材として) 具体的に、(1)と(3)については、英文論文を書き上げ、専門査読誌に投稿中である。 (3)では、「結託の可能性」の入ったプリンシパル(株主)=スーパーバイザー(監査役)=エージェント(経営者)からなる3層エージェンシーの「連続タイプ」モデルを構築し、そこに「単調比較静学」という最近の分析手法を取り入れて、数学的に扱い易い構造にした。その上で、初期契約へのコミットメントを若干欠くケースや、最近の行動経済学的な要素を導入した場合への拡張を行い、また近年の「監査役設置会社」と「委員会設置会社」の選択を含め、「企業統治」への明確な含意を導出した。成果の一部は英文査読誌に公刊した。(4)では、(1)の理論のアイディアを「EU(欧州連合)における集権・分権とインセンティブ問題」という国際政治経済のガバナンス問題に応用するとともに、EUガバナンスを「金融集権と財政分権」および「状態依存型のコントロール権の移動」を特徴とする「相対主権論」でとらえる斬新なアイディアを提示し、その理論的根拠と現実との対応の研究を進展させた。
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Research Products
(5 results)