2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20530170
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Research Institution | Prefectural University of Kumamoto |
Principal Investigator |
中宮 光隆 Prefectural University of Kumamoto, 総合管理学部, 教授 (80155811)
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Keywords | シスモンディ / ピエール・プレヴォ / エティエンヌ・デュモン / 『ビブリオテーク・ブリタニク』 / マッキントッシュ / ベンサム / ピクテ・ド・ロシュモン / 功利主義 |
Research Abstract |
平成20年度は,資料収集を中心に行いつつ,加えて現時点での研究成果に関する論文を執筆し公表した。資料収集は主として以下の3カ所で実施した。(1)ジュネーヴ大学公共図書館(スイス・ジュネーヴ)ではシスモンディ関係の書籍・雑誌記事・手紙等を閲覧し,書写やコピーを行った。これらから,シスモンディとピエール・プレヴォやエティエンヌ・デュモンとの親密な関係や,『ビブリオテーク・ブリタニク』誌の編集者たちのなかでもとりわけピクテ・ド・ロシュモンとの交流に注目すべきであることが理解できた。また,18世紀末から19世紀初頭にかけて出版された同誌とは別に,1820年から3年間にわたって刊行された『立法および法学年報』も,ベンサムの功利主義を普及させる意図を感じさせるものであり,広く多様な知見を集約させることの必要性を説いている。これらはシスモンディの思想形成に大いに影響を与えたと推測される。また,同図書館で閲覧しあるいはリストアップした文献の一部を帰国後入手した。これらの内容の検討は次年度の課題である。(2)大英図書館(イギリス・ロンドン)ではマッキントッシュに宛てたシスモンディの手紙を書写・解読した。この点は未完了であるが,両者の関係を知る手がかりのひとつとして重要である。(3)我が国で唯一『ビブリオテーク・ブリタニク』誌を所蔵する天理大学図書館(奈良県天理市)で同誌を閲覧した。第1巻について序文と目次を瞥見したが,次年度に他の諸巻も含めた内容の検討を行う予定である。これらは,シスモンディの経済思想が,西ヨーロッパ各地に広く広がる彼の周囲の入々との交流のなかで育まれたこと,したがってそのようなパースペクティブで経済思想や経済理論の系譜を跡づける必要があるとの私見を証明する有力な論拠のひとつとして重要であると思われる。これらの研究成果について,別記の通り論文を執筆し公表した。
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