2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20530170
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Research Institution | Prefectural University of Kumamoto |
Principal Investigator |
中宮 光隆 熊本県立大学, 総合管理学部, 教授 (80155811)
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Keywords | シスモンディ / ピエール・プレヴォ / ビブリオテーク・ブリタニク / エティエンヌ・デユモン / スタール夫人 |
Research Abstract |
平成22年度は研究計画に沿って、過去2年間に国内外で収集した論文や図書等の内容を検討するとともに、なお未収集の文献について国内外で収集に努め、研究成果を論文にまとめた。3年間の本研究の最大の成果は、シスモンディ経済思想の淵源として、アダム・スミスやリカードウ等の経済理論面からのみならず、従来等閑に付されてきた社会経済思想面からの視点がきわめて重要であることが明確になった点である。私自身、本研究開始以前は、シスモンディ経済理論の特徴はよく指摘されるような単なる過少消費説ではなく、より平等な分配の実現と政府の介入による諸資本の競争の制限という論点が重要な論理として包含されていることにあるとの指摘はしてきたが、しかしそこにとどまっていた。実はその経済理論の背景に、彼の周囲の人々から受けた社会経済思想があったのである。それらの人々は多岐にわたるが、大別すればひとつはピエール・プレヴォ、18世紀末から刊行された雑誌『ビブリオテーク・プリタニク』誌の編集者たち、それにエティエンヌ・デュモンであり、彼らの共通思想は功利主義である。他のひとつはスタール夫人とそのサロンに集った人々である。これらのうち過去2年間は全体の概要とピエール・プレヴォのバイオグラフィーを中心にまとめたが、本年度は彼の経済理論の特徴をその著作や翻訳書から明らかにし、別記論文にまとめた。さらに加えて、膨大な『ビブリオテーク・ブリタニク』誌の中から関係するテーマを論じた記事(論文)をピックアップし、それらの中から同誌の編集者たちの思想が基本的にデュモンにも通じる功利主義であることを論証するとともに、その普及に取り組んでいた彼らの雑誌出版活動が若きシスモンディの思想形成に多大な影響を与えたことを指摘する研究をまとめつつある。
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