2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20530183
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
上田 貴子 Waseda University, 政治経済学術院, 教授 (00264581)
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Keywords | 経済統計学 / 経済政策 / 応用経済学 |
Research Abstract |
本研究は,家族の中でどのように資源が分配されているのか、また、親から子へどのような経路で資源が継承されているのか、実証的に明らかにすることを研究目標としている。本年度は特に、親から子への所得格差の継承程度の推計と、教育投資を通じた所得格差の継承の程度について実証分析を行った。 分析においては、家計個票データを用いている。所得格差の継承分析においては通常、複数年平均を用いた回帰分析と、操作変数法が採用されている。本研究ではこれらの分析に加えて、ノンパラメトリック回帰分析、及びSIMEX (Simulation Extrapolation)分析等を採用した。 本年度の研究成果としては、まず、日本の世代間所得格差の継承の程度の推定を行った分析の論文が査読付き海外専門誌に掲載された。親の所得から子の所得に対する弾力性は有配偶男性で0.4、女性では0.3程度であり英米よりも弾力性が低い、つまり継承の程度が弱いが、北欧諸国等よりは弾力性が高い、つまり継承の程度が強いことが示唆されている。 さらに、日本における所得格差の継承のうち、教育投資による格差継承分析に関して論文にまとめた。親の所得が子の教育選択に与える影響と、子の教育選択から学卒後の所得への影響の推定から、親子間の所得水準継承程度の3~5割程度は教育を媒介とした経路によるものであることが示唆されている。 また、世代間所得格差の継承に関して、アジアではシンガポール以外の国については推計が行われていないことから、日本との比較の視点から韓国に関しても世代間所得格差の継承の程度の推定を行い、論文にまとめ、conferenceやセミナー報告を行った。韓国では弾力性は男性で0.3程度、女性では0.4近いとことが示唆されている。
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