2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20530183
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
上田 貴子 早稲田大学, 政治経済学術院, 教授 (00264581)
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Keywords | 経済統計学 / 経済政策 / 応用経済学 |
Research Abstract |
本研究課題では,家庭内での資源の配分や継承の実証分析を行ってきた。家庭内での資源配分に関しては、夫婦間での消費及び時間配分に関して、世帯所得に占める妻の所得の割合が高いほど、妻のための消費支出割合は増加し、妻の家事負担割合が減少することが示された。また、夫の親との同居は妻の家事負担割合を増加させる一方で、妻の消費割合を増加させる。 親子間での所得の連関に関して、欧米での研究が先行しアジアでは研究が緒についたところであり、日本との比較の視点から東アジア諸国に関しても同様の分析を行ってきた。連関の程度は、日本は英米よりも小さいが北欧・カナダ等より大きい可能性があることが示唆されている。また、韓国は男性については日本よりもさらに親子間の連関が小さいが、女性では日韓で連関の大小が逆転している。 このような親子間での所得連関はどのような経路を通じて生じるのか。遺伝や家庭環境等とともに、学校教育投資がその主要経路として考えられる。このような研究は欧米でもまだ少ないが、所得連関の3-5割は教育経由である、つまり、親が高所得であるほど子の教育水準が高く、子の高所得の可能性が高くなる。日本・韓国ともに所得連関の4-5割程度が教育水準によることが示された。 最後に、親世帯から子世帯への金銭的・物質的な援助の影響を分析した。子世帯の所得が低い場合、子供が幼い場合、また親と同居している場合に、親からの家計援助がある確率が高くなることが示された。親世帯からの援助は、必ずしも子世帯の家計に貢献しているとは言えず、むしろ、消費水準や貯蓄水準の低いような子世帯に対して援助がなされている可能性がある。また、親の所得階層の影響は明確ではない。総じて、親世帯から子世帯への援助は所得格差の継承よりも所得再分配の傾向にあることが示唆された。
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