2009 Fiscal Year Annual Research Report
開発途上国の農水産物加工における小規模起業開発とマイクロファイナンス
Project/Area Number |
20530195
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
伊東 早苗 Nagoya University, 大学院・国際開発研究科, 准教授 (80334994)
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Keywords | 農水産物加工 / 小規模起業開発 / マイクロファイナンス / 貧困 / バリュー・チェーン / 国際情報交換 / バングラデシュ:カンボジア |
Research Abstract |
平成21年度は、カンボジアで米国援助庁が実施するMSME(Micro, Small and Medium-sized Enter prises)プロジェクトのスタッフに同行し、コンポントム県のプロジェクト実施地域で現地調査を行った。昨年度は米国援助庁がバングラデシュで実施する「カタリスト・プロジェクト」について調査したが、二つのプロジェクトには米国援助庁の貧困対策に関する基本姿勢が表れており、共通点が多い。すなわち、どちらのプロジェクトも、農水産物加工分野で何がしかの技術や経験をもつ農民を対象とし、すでに存在するバリュー・チェーン上の諸活動を有機的に連結させることによって起業活動を促進することを戦略としている。その際必要となる金融サービスへのアクセスも、独立したマイクロファイナンス機関に頼るのではなく、バリュー・チェーン上の業者や農民・漁民間の資金連携をよくすることを通じて向上させようとする。この戦略については、バリュー・チェーン・ファイナンシングに関する国際的な議論に関する資料を読み込み、実地調査に備えた。 カンボジアの現地調査では、MSMEプロジェクトに参加する農民・漁民・加工業者へのインタビューを実施した。その結果、バリュー・チェーン上のお金のやりとりは運営資金を得るためには役立つものの、新規事業や事業拡大のための投資資金とはならないことが判明した。こうした目的にはマイクロファイナンス機関からの融資が原則的には有効であるものの、自然災害など多くのリスクを抱える零細農民にとって、ローンの返済には困難がつきまとうことも確認された。 これまでの調査を通じ、途上国農村の貧困層が農水産物加工分野ですでに起業している場合には、バリュー・チェーンを通じた運営資金調達が有効に機能する一方、新たに起業する者にはマイクロファイナンス機関の融資が重要であることがわかった。ただし、マイクロファイナンス機関が提供する金融サービスには、ローンの大きさや担保の要件、返済期間などの点で、乗り越えるべき様々な課題があることも確認された。
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[Journal Article]2010
Author(s)
Marilyn Carr
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Journal Title
Trading Stories : Experiences with Gender and Trade(Chapter 10, "Packaged to Perfection : The SPS Agreement and Aquaculture in Bangladeshを共同執筆)(Commonwealth Secretariat)
Pages: 117-124
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[Journal Article]2009
Author(s)
大坪滋
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Journal Title
国際開発学入門(「第3章」、及び「課題クラスター1 : 貧困」を執筆)(勁草書房)
Pages: 119-167
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