2010 Fiscal Year Annual Research Report
開発途上国の農水産物加工における小規模起業開発とマイクロファイナンス
Project/Area Number |
20530195
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
伊東 早苗 名古屋大学, 大学院・国際開発研究科, 准教授 (80334994)
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Keywords | バリュー・チェーン / マイクロファイナンス |
Research Abstract |
今年のバングラデシュで実施した調査では、ダッカの3大スーパー・マーケットを訪問し、農水産物の調達経路を調べた。その結果、これらのスーパー・マーケットが一部の農産物を直接経営する地方農場で生産していること、それ以外はダッカ中央卸売市場から買い付けていることがわかった。スーパー・マーケット店舗では生鮮野菜や魚介類の他、中産階級向けの加工食品(タンドリ風に下味をつけた鶏肉、パッケージ化された乳製品等)が多く販売されているが、これらは食品加工会社で一旦加工されたものをスーパー・マーケットが買い付ける場合がほとんどである。中央卸売市場における調査では、農水産物が地方の農村から中央卸売市場に到達するまでのサプライ・チェーンを調べた。その結果、農村の生産者と卸売業者の間には仲介業者が存在するが、各アクターは携帯電話で瞬時に価格交渉を行い、どの卸売市場に生産物を卸すかを決定していることがわかった。また、サプライ・チェーンを構成するアクター間で、幅広く「前払いシステム」が活用されていることが判明した。以上の結果から、バングラデシュ農村の生産者は、都市の中産階級を消費者とするバリュー・チェーンに組み込まれてはいるものの、農村レベルで独自に食品加工をするだけの情報や、コミュニティ内での集団的生産体制を整えるには至っていないことがわかった。消費者のニーズに関わる情報は、スーパー・マーケットと、そこに商品を納める食品加工会社、さらにスーパー・マーケットが直営で生産を管理する農場内で共有されるに過ぎない。ただし、農村からスーパー・マーケットをつなぐバリュー・チェーンの中でIT技術(携帯電話)を使った情報交換が浸透していることがら、現時点では別個に行われている各アクター間の「前払い」システムと携帯電話による価格交渉とを連結させ、ITを用いた金融サービスを普及させる余地があるといえる。
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