Research Abstract |
研究を実施するための,研究用データベースの整備と基礎研究を実施した。まずは,オフィス移転を分析するために,オフィス仲介会社より,テナント移転データを購入し,基礎分析を実施した。同研究は,佐藤(2008)の発展的な分析である。また,オフィスの成約賃料データを,東京都心5区(千代田・中央・港・新宿・渋谷)に限定し1985-2007年にかけて整備した。加えて,家計の住宅立地の多様性を分析するために,株式会社リクルートと協力しアンケート調査を実施することで,住宅の取引価格と家計の属性に関するデータ整備を行った。基礎的な分析の成果としては,東京大学空間情報科学研究センターのDiscussion Paperと一橋大学物価研究センターのWorking Paperにそれぞれ2本の論文を,麗澤大学経済社会総合研究センターのWorking Reportに1本の論文を発表した。そのうち,1本はJournal of the Japanese and International Economiesに掲載されることが決定された。また,1本の論文が投稿・審査中である。一連の研究を通じて,まずは,企業の立地は単なる収益性の基準だけでなく,企業の集積の利益や企業間のネットワークにより変化してくることが予想される基礎的な知見を得た(清水(2008))。また,供給制約が強い中では,玉突き現象としてテナント移転が発生する可能性が記された(佐藤(2008))。次年度においては,帝国データバンクのデータと融合させることで,企業の特性と企業立地の多様性についても研究を進める予定である。また,家計においては,所得や家族構成といった立地主体の特性によって付け値関数が変化する可能性を,非線形性への配慮と近隣外部性を考慮したヘドニック・モデルを推定することで明らかにした。しかし,これらの分析は,直接に家計の多様性に配慮したものではない。次年度においては,これらの研究成果と,リクルートと共同で整備したデータベースを融合させて,本研究の目的としている家計の多様性に配慮したモデルの開発を行う予定である。
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