2008 Fiscal Year Annual Research Report
アジア経済危機後のインドネシアの地域間経済格差の変化と政策的含意の考察
Project/Area Number |
20530211
|
Research Institution | Chiba Keizai University |
Principal Investigator |
片岡 光彦 Chiba Keizai University, 経済学部・経済学科, 准教授 (20321713)
|
Keywords | 地域間経済格差 / インドネシア / 要因分解分析 / シフトシェア分析 / タイル尺度 / 経済成長 |
Research Abstract |
本研究は、一国の経済成長と地域格差の是正という2つの政策目標の狭間で苦慮する中央政府に対する政策的含意の提示を目的としており、平成20年度は研究の第一段階として、地域間経済格差に関する最新の先行研究サーベイとインドネシアの地域データを整備した。その上で、経済危機前後のインドネシアの地域間経済格差の推移を概観し、その要因を分析した。 インドネシアでは、経済危機以降の地方分権の機運の高まりから、いくつかの州が分離・独立し、国内の州の総数は経済危機以前の27州から2003年には33州まで増加した。しかし、インドネシア中央統計局(BPS)の公表データは分離・独立以前にまで遡った改定が行われていないため、研究代表者が分離・独立以前のデータに再統合して、州毎の時系列データを整備した。その上で、ひとりあたりGDPに基づく地域間経済格差を、タイル尺度を用いて、労働生産性、生産年齢人口比率、労働人口比率、就業率に要因分解した。さらに、シフトシェア分析を使って、労働生産性の地域間格差を、産業別の生産性と就業構成比に基づく要因分解分析を行った。その結果、インドネシアでは、同一産業内の労働生産性の地域間格差が大きく、多くの地域では労働生産性の高い産業に労働人口が集中しており、これらがインドネシアの地域間経済格差に大きな影響を与えていることが明らかとなった。そして、こうした状況の是正には、都市と地方との地域間相互依存関係を強化し、都市部に偏重した従来型の地域開発政策を改めることが重要であると示唆した。 なお、同様のアプローチを戦後日本に適応した研究成果も報告しており、今後、これらの成果を用いて、経済発展段階の異なる国々を比較し、地域間経済格差における定型化された事実を提示することで研究の独自性を確保したいと考えている。
|
Research Products
(2 results)