Research Abstract |
本年度は,データ入手・整理,モデルの設定を中心に行い,また,一部,これまでの議論や成果をまとめる形で研究発表を行った.まず,データ入手・整理について,すでに信用調査会社を通じて企業のスタートアップ期の財務データを入手しており,これをもとにデータセットの構築をすすめた.とくに,データセットに含まれていない所有構造について,子会社・関連会社,および持株会社を識別するためのデータを新たに追加した.つぎに,モデルの設定について,スタートアップ企業の資本構成(資金調達)の変化とパフォーマンスとの関係を検証するためのパネル分析を用いた推定に加えて,いくつかの企業がすでに退出していることから,事業の存続および退出の視点からパフォーマンスをとらえたモデルの推定を検討している.とりわけ,退出については,破産や被合併といった複数のタイプがみられることから,これに対処するために,コンピーティティブリスク比例ハザードモデル(competitive risks proportional hazards model)の応用を検討した.さらに,研究成果については,中小企業,とくに,スタートアップ企業に関する文献・資料の収集や先行研究のサーベイもとに,これまでの議論をまとめる形で研究成果を発表した.加えて,スタートアップ企業のエクイティファイナンスへの取り組みを明らかにするために,別のデータセットをもとに株式公開志向の決定要因についての研究成果を発表する予定である.こうした中間的な研究成果をもとに,現在,新たに構築したデータセットを用いてモデルの推定を行っている.次年度も引き続き,この作業を中心に行い,最終的な研究成果へとつなげていく.
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