2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20530217
|
Research Institution | Musashi University |
Principal Investigator |
松川 勇 Musashi University, 経済学部, 教授 (50287851)
|
Keywords | 商業送電投資 / 規制送電投資 / 地域間連系線 / 送電権 |
Research Abstract |
本研究では、送電網の整備を促進する方策として商業送電投資を取り上げ、欧州における2つの事例をもとに特徴と問題点を明らかにした。欧州では、送電網の混雑の緩和を目的として地域間連系線の整備を進めているが、設備容量と料金を規制する従来の方策では連系線の投資が思うように進まない現状がある。このため、地域間の電力価格差を利用した取引から得られる利潤を誘因とし、設備容量と送電料金を自由に設定できる商業送電投資が、連系線投資を促進する有効な方策として注目されている。商業送電投資の動機・規制の除外・送電権の配分・電力市場に与える影響等の観点から、BritNedとEstlinkの2つの事例を比較するとともに、わが国の地域間連系線投資における政策課題を整理した。 経済的な視点から見た商業送電投資と規制送電投資との相違は、(1)評価の観点、(2)投資主体、(3)設備容量・投資時期・料金の設定における自由度、の3点に要約される。まず、規制送電投資では社会的純便益の観点から主に評価され、便益が費用を上回る場合に投資が認可される。これに対して商業送電投資では、投資主体の利潤の観点から評価され、送電収入が費用を上回る場合に投資が実行される。次に、規制送電投資では送電会社あるいは垂直統合型の電力会社の送電部門が事業主体となるが、商業送電投資を行うのは送電会社や電力会社の送電部門と独立した事業主体である。さらに、規制送電投資では、設備容量の決定・投資時期・料金水準に関してそれぞれ認可が必要となるが、商業送電投資では、事業主体が自由に送電容量・投資時期・料金水準を決めることができる。
|