2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20530217
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Research Institution | Musashi University |
Principal Investigator |
松川 勇 Musashi University, 経済学部, 教授 (50287851)
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Keywords | 地域間連系線 / 商業送電投資 / 送電権 / 外部性 / 費用便益分析 |
Research Abstract |
本年度の研究では、まず地域間連系線を例に取り上げ、自由化された電力市場において最適な送電網を構築するための経済的規制について論じた。具体的には、フィンランド、オランダ、オーストラリア、アメリカなどの諸外国において近年注目を集めている「商業送電投資」(merchant transmission investment)、送電網へのアクセスを効率的に配分する「送電権」(transmission right)、費用便益分析にもとづく送電投資評価を中心とした投資プロジェクトの推進、などについて、わが国の状況を踏まえて論点を整理した。 次に、オランダとノルウェーを結ぶ直流送電線「NorNed」の事例をもとに、地域間連系線投資の外部経済性の評価を試みた。送電投資の費用便益分析に関する従来の研究では、価格に及ぼす影響を中心とした電力市場における経済効率性に焦点が当てられてきた。しかし、環境に及ぼす影響が著しく異なる電源を有する地域の間で電力取引が行われる場合、これらの地域を結ぶ送電線の容量の増加によって、地域へ及ぼす環境への影響が大きく変化する可能性がある。たとえば、石炭火力に依存していた地域が、送電線を介して他地域から水力発電由来の電力を購入する場合、石炭の利用を抑制して二酸化炭素などの汚染物質の排出量を抑制することができる。この場合、送電投資には、汚染物質の削減を通じた外部不経済の緩和のメリットがある。そこで、NorNedの利用状況、オランダおよびノルウェーの電源の容量・コストなどのデータに基づき、両国間の電力取引が環境外部性に及ぼす影響を分析した。その際、欧州連合の環境外部性評価プロジェクト「ExternE」における、オランダとノルウェーのデータを使用して、外部性の金銭的評価を行った。その結果、地域間連系線投資による外部コストの削減は、投資コストの約12%に相当することが明らかになった。
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