2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20530219
|
Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
秋葉 弘哉 Waseda University, 政治経済学術院, 教授 (60138576)
|
Keywords | 国際経済学 |
Research Abstract |
2009年度は、「通貨同盟とサイズ効果と厚生分析」に関して、少し各国の実際の経済状況を検討してみようと考え、諸文献を再精査すると共に、この目で確かめることにも重点を置いた研究を進めた。まず、厚生分析においては、通貨同盟全体としては(1)貿易統合の利益、具体的にはRose効果と言われる貿易量の増加による利益、さらに(2)金融政策の信頼性による利益、具体的にはルーカス=サージェント、キッドランド=プレスコット的な時間非整合性を回避できることからの利益が指摘されている。前者の測定は比較的に言えば容易であろう。しかし後者の測定は、事実上かなり難しいような印象を私は以前から持っている。更に、通貨同盟に加盟する個別の国に関しては、国民通貨を廃貨にして単一通貨を法貨として採用する場合には、単一通貨のシニョレッジの配分からの利益が発生するはずで、その配分方法によっては、利害対立が生じうることは以前から指摘されていた。このシニョレッジの実際の配分方法に関しては、CMAの通貨同盟で採用されている方法が参考にはなるが、その配分方法がユーロランドの新規加盟国に適用可能かどうかは分かっていない。この問題は単一通貨を発行する地域中央銀行の解決すべき問題ではあるが、同盟の「サイズ」を拡大する参加国の個別中央銀行にとっては重大な国民厚生問題である。その一例として、近い将来ユーロランドへの加盟が期待されているバルト3国の実情を知るために、夏の一時期、ラトビア大学を訪問して、バルト3国の実情を観察してきた。好況下にあるエストニアでは、国民通貨とともにユーロがかなり流通していたが、サブプライム問題を契機とした今回の世界的不況の影響を受けたラトビアやリトアニアでは、流通に余り熱意が感じられなかった。このような状況を判断しながら、通貨同盟に参加する場合に獲得できる、実際の厚生水準変化の研究を継続してみたいと思った。
|