2009 Fiscal Year Annual Research Report
CFAフランと旧仏領西アフリカの経済発展:資源ブーム時の為替切り下げ効果を中心に
Project/Area Number |
20530234
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
正木 響 Kanazawa University, 経済学経営学系, 准教授 (30315527)
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Keywords | CFAフラン / 西アフリカ / 経済通貨統合 |
Research Abstract |
昨年に続いて、CFAフランを共有する西アフリカ8カ国(UEMOA)が、通貨統合によって得ているベネフィットとそのコストを明らかにするために、これらの国の実質実効為替レートを算出し、周辺諸国のそれと比較することを試みた。CFAフラン圏諸国は、名目実効為替レートの変動が小さく、当初、これは経済環境の変化に対するフレキシビリティーの欠如ととらえていたが、他方で、通貨統合ゆえにインフレ率も低く抑えられているというメリットを享受していることも確認された。成果の一部は、「西アフリカ諸国の通貨統合-実質実効為替レート(1999-2006)のクラスター分析を通じて」金沢大学人間社会研究域経済学経営学系ディスカッションペーパーシリーズ、No.14,にまとめるとともに、日本国際経済学会の全国大会で発表した。また、西・中部アフリカのCFAフラン圏を分析対象とした論文を、現在、査読雑誌に投稿中である。上記に加えて、2008年に世界的に見られたインフレの効果を織り込むために、昨年度に分析した実質実効為替レートの算出期間を2008年末まで拡大して算出することも試み、その結果については、現在分析中である。 また、近年、上記のUEMOAとその周辺諸国で形成される西アフリカ15カ国レベルでの通貨経済統合(ECOWAS)に注目が集まっていることから、その可能性を探るために、ガーナとトーゴでフィールドリサーチを実施し、ガーナ中央銀行や西アフリカ通貨研究所でインタビューを行った。新たな経済通貨統合実現のためには、多くの課題を克服しなければならないが、その目的に向かって、西アフリカ諸地域が関税同盟や共通の制度設計に努力していることは確認できた。また、ガーナと同様、CFAフラン圏に囲まれているガンビアとセネガルの関係を調査し、まとめた。これについては、2010年度中に出版予定であるとともに、下記に挙げる一般書にも一部発表した。 ところで、研究実施計画にあげながら十分に行えなかったものとして、CGEモデルを用いての通貨切り下げ効果がある。データの問題およびその意義への疑問から、CGEモデルを用いた分析が適切なのか検討中である。 なお、申請時には、日本では馴染みの薄いアフリカの経済に関する研究成果を広く社会に還元することの重要性についても触れたが、上記の研究成果の一部は、財務総合政策研究所(財務省)のランチミーティングにて発表させていただくとともに、一般向けに書かれた小川了編『セネガルとカーボベルデを知るための60章』(明石書店、2010年3月刊)の第13章「セネガルの通貨の成り立ちと現在-通貨の安定とフレキシビリティーの間で」および第19章「セネガルとガンビア-その歴史と現在」においてもいかされている。
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