2008 Fiscal Year Annual Research Report
わが国の医療制度による非市場的調整機能と制度設計の在り方に関する経済的分析
Project/Area Number |
20530240
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Research Institution | Tokyo Gakugei University |
Principal Investigator |
知野 哲朗 Tokyo Gakugei University, 教育学部, 教授 (40171938)
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Keywords | 医療制度 / 資源配分機能 / 調整機能 / implicit costs / 医療政策 / 療養病床 / health system / 医療経済学 |
Research Abstract |
本年度の研究実績の概要については、日本の医療制度に関わる研究とOECD諸国の医療制度に関わる研究に分けて、次のように述べることができる。 1) 日本の医療保険制度、公私医療機関の併存する医療提供システム、および診療報酬制度という制度的な枠組みを前提に、それらの制度によって生じる取引関係者にとっての諸費用を明らかにし、療養病床再編に関わる医療政策の経済的含意と問題点を解明した。高齢者入院医療費の適正化を求める療養病床再編の計画が変更せざるを得なかった主要な理由は、現行の医療制度のもとで生じる暗黙的な調整機能が考慮されてないためである。つまり、供給側については病床再編の対象となる医療機関が私的医療機関であり、したがって、その主体の経済的インセンティブが政策的観点から考慮されるべきことになる。また需要側については、高齢者入院患者における再編に伴う追加的なimplicit costsが発生することから、その費用を明示的に考慮した主体の行動を考慮することが欠かせない。これらは医療分野における制度的な仕組みに依存している。 2) 本年度ではWHOやOECDの諸研究を通じて、OECD諸国におけるhealth systemのperformanceに関する諸研究を吟味し、本研究への応用を検討している。とくにperformanceの抽出と指標化がhealth systemという仕組みの機能と評価にとって欠かせないものとなるが、その指標が多様なものとなっていることはhealth systemの仕組みに関する評価の困難さを示す。しかし、多様なperformance諸指標のなかでも、共通する指標が存在する事実はhealth systemの機能を集約するものとして注目できる。この点への理論的な吟味は日本の医療制度を考察する1つの視点を示唆する。
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Research Products
(1 results)