2011 Fiscal Year Annual Research Report
わが国の医療制度による非市場的調整機能と制度設計の在り方に関する経済的分析
Project/Area Number |
20530240
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Research Institution | Tokyo Gakugei University |
Principal Investigator |
知野 哲朗 東京学芸大学, 教育学部, 教授 (40171938)
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Keywords | 医療制度 / 調整機能 / 医療財源 / スチュワードシップ / ガバナンス / 類型化 |
Research Abstract |
医療制度は市場機構と同様に、資源配分と所得配分を規定する機能を有している。しかし、医療制度は各国ともに医療分野の様々な規制や制度から成り立つ社会的仕組みで、各国に特有な機構を含むものである。さらには、価格メカニズムという明示的な調整機能を備えた市場とは相違し、医療制度は非市場的な資源配分方法である。そのため、環境変化に対して医療制度の調整が社会的に要請されてくるが、昨年度の研究から医療制度のパフォーマンス評価は調整機能を内部化させる方策の1つであることを明らかにした。これらの医療制度の経済的機能を踏まえ、本年度の研究は医療制度のパフォーマンス向上を政策的に志向するOECDやWHOの諸研究や、医療制度の国際的比較研究を参照して、医療制度の分析フレームワークの構築を追究することである。 WHO研究ではスチュワードシップ、医療財源、医療サービスの供給、医療資源の提供という4つの基本的機能を抽出して医療制度のモデルを、OECD研究ではとくに医療財源の在り方を中心に医療制度のモデル分類を提示している。また類型化モデルの諸研究においては医療財源、医療サービスの供給、そして規制という3つの視点から医療制度の分類化と分析モデルの提示を試みている。しかし、最近のOECD諸国における医療制度の実証的調査研究から、典型モデルの医療制度をもつ国でも、当該モデルとは異質な政策手法が導入されている事実が観察されている。したがって、分析フレームワークの構築に際しては、従来の分析手法を改善する方法としては医療制度の基本的機能を拡張すること、ガバナンスの在り方を再検討することが解明された。さらに、従来の類型化による分析手法それ自身が一定の制約を有していることが明らかにされた。
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Research Products
(1 results)