2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20530242
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
森田 憲 Hiroshima University, 大学院・社会科学研究科, 教授 (10133795)
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Keywords | 中国 / バブル / 体制移行 / 経済改革 / 資本市場 / 先物市場 |
Research Abstract |
本年度もまた、中国モデルの滴切な捕捉を求めて研究調査が行われ、とりわけ(1)第1は、中央地方関係に焦点をあて、特に「分税制」の導入に伴う諸問題に焦点をあてて研究がすすめられた。また(2)第2は、対米摩擦をめぐって、日米摩擦を回顧し、日本のバブル現象の注意深い分析をとおして、中国バブルの可能性の検討が行われた。また、本年度は、(3)第3に、中国におけるバブル現象と、中央地方関係という意味で、共通の問題点を有する環境問題の現状の分析を行うことを試みた。 すなわち、中央地方関係という視点をとおしてみると、ひとつはその「評価システム」の問題が深く関わり、もうひとつは、「立憲体制」の欠如、言い換えると、「地方自治制度」の未発達という問題の存在に行きつくのである。 「分税制」の導入によって、財政基盤が揺らぎ、しかし公共サービス供給義務は変わらない地方政府は、結局土地譲渡収入に多くを頼る構造が出来上がり、したがって不産開発産業の成長を促したのである。いうまでもなく、それは不動産バブルを引き起こすこととなった。 その背後に存在するのは、地方政府(の官僚)を評価する基準がもっぱらGDP成長率に求められるという構造である。(決して、人びとによる選挙行動をつうじて評価されるという「立憲的な」仕組みではない)。「GDP成長率万能主義」は、したがって、環境の軽視につながり、今日の中国における深刻な環境汚染を引き起こしたのである。その意味で、「中国バブル」と「中国環境汚染」とは、いわば「同根の」現象なのである。 こうした、バブル現象や環境汚染等の諸問題を抱える現状を改革していくための対処策は、結局のところ、政治的には「立憲体制」に基づく「地方自治制度」の導入であり、経済的には「市場機構」の整備に求めるのが適切である、というのが本年度の研究をつうじて得られた結論である。
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