2010 Fiscal Year Annual Research Report
東アジアにおける経済グローバル化の進展と経済的不均衡に関する実証的研究
Project/Area Number |
20530243
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
大坂 仁 九州大学, 経済学研究院, 教授 (90315044)
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Keywords | 中国経済 / 経済グローバル化 / 所得格差 / 収斂 / 時系列分析 / 東アジア / 地域内貿易 |
Research Abstract |
本年度の研究では、昨年度に引き続き東アジア諸国の中で国際的に影響力を高めている中国について、実証的に経済成長や所得格差の要因分析などを行った。まず、中国の経済改革以降の地域(省)別データを用いて分析してみたところ、高い経済成長を示す地域の要因に高い教育水準や投資が上げられることが示されており、これら変数の差が地域別にみた所得レベルの違いに影響を与えていることが示唆される。なお、中国の地域別の1人あたりGDPデータを用いてパネル単位根検定を行ったところ、地域別には東部地域および中央地域に収斂可能性がみられるほか、所得別には高所得5地域および低所得5地域に収鮫可能性が推測される結果となった。ただし、これらのパネル単位根検定では構造変化を考慮しておらず、今後は構造変化を考慮したパネル単位根検定で検証を行う必要がある。 なお、近年の経済グローバル化の進展とともに、東アジアでは多くの国で所得格差が広がっているが、経済成長著しい中国も例外ではない。ただ先行研究でも示されているとおり、急速な中国の経済成長には国際貿易の効果も大きく、また国際貿易への中国の影響も急速に拡大している。本年度の研究で東アジア地域の貿易構造をデータ概観により考察してみたところ、輸出入にみる中国貿易は世界比率また東アジアの地域比率の双方で急速にその重要性を増しており、東アジア諸国の中では韓国もそれに続いていることが分かる。一方、日本の経済規模は依然大きいものの輸出入比率にみる国際貿易面での影響力は低下しつつある。なお、東アジアにおける地域内貿易は輸出入ともに拡大し続けており、この地域への海外直接投資も世界的に重要度を増していることが示されている。このように、中国をはじめとする東アジアの経済成長ならびに経済グローバル化の中で、今後もどのような変化がみられ、また経済的不均衡が推移していくのか実証分析を行っていく。
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