2011 Fiscal Year Annual Research Report
東アジアにおける経済グローバル化の進展と経済的不均衡に関する実証的研究
Project/Area Number |
20530243
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
大坂 仁 九州大学, 大学院・経済学研究院, 教授 (90315044)
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Keywords | 東アジア / 所得レベル / 時系列データ / 収斂 |
Research Abstract |
本年度の研究では、昨年度に引き続き中国をはじめとする東アジア諸国の経済的不均衡について、時系列データを用いて地域内の所得レベルが拡散しているのか収斂しているのか実証的に検証を行った。まず、東アジアにおける各国の1人あたりGDPを所得レベルの擬似変数として、Pedroni and Yao(2006)などの先行研究に倣いパネル単位根検定を行った結果、東南アジア諸国を含む広域の東アジア地域での経済的な収斂可能性は示唆されるものの、パネル単位根検定の異なるテストで違う推定結果が得られるなど頑健な結果とはいえなかった。これについて、各国の1人あたりGDPを図示すると、地域内でも経済成長の著しい中国、または相対的に経済低迷の続くフィリピンのデータが他の国のデータと異なるトレンドを示しており、パネル単位根検定の推定結果にも影響を及ぼしていると考えられる。ちなみに、これら2ヶ国をサンプル国から外し、東アジアの中でも新興工業国であるNICs(台湾を除く)と日本、ならびにフィリピンを除く東南アジア諸国間でそれぞれパネル単位根検定を行うと頑健な推定結果として収斂可能性が示される。これらから推測されることは、東アジア経済が全体として収斂しているというよりは、所得レベルの近い国から形成されるサブグループ、例えばアジアNICsと日本、また東南アジアというサブグループ内で収斂がみられており、準じて東アジア経済の収斂が起こっている可能性である。なお、本年度の研究で指摘されることは、中国やフィリピンの所得レベルが今後他の東アジア諸国の所得レベルに収斂していくのかという問題である。これについては、今後も引き続きデータを検証していくことが必要である。
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