2009 Fiscal Year Annual Research Report
コーポレートガバナンスと雇用・人事システムの制度的補完関係に関する実証研究
Project/Area Number |
20530249
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
野田 知彦 Osaka Prefecture University, 経済学部, 教授 (30258321)
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Keywords | コーポレートガバナンス / 雇用調整 / 制度的補完性 / 労働組合 / 企業業績 |
Research Abstract |
日本においては、一期の大きな赤字、または、二期連続の赤字の場合に、解雇、希望退職を含んだ人員整理(リストラ)が行われるという経験則が確認されているが、黒字の時に人員整理を行う企業も存在していることや、赤字に人員整理を行う企業と黒字に行う企業の違いは何よって規定されるのかについては全く分析がなされていない。「制度的補完性」の議論によれば、日本企業の長期雇用制とメインバンク、株式持合いなどの企業の金融システムは相互に補完関係にあるとされているので、赤字まで雇用を維持するという長期雇用制を象徴する慣行は、メインバンクとの関係が強い企業や金融機関の持株比率が多い企業においてみられる傾向があると予想できる。また、労働組合が雇用保障に対して強い影響を持っていることもよく知られているので、組合のある企業ほど赤字に人員整理を行う傾向が強くなるであろう。本稿の目的は、黒字期に人員整理を行う企業と、赤字期にそれを行う企業との違いが、どのような要因によって規定されているのかをコーポレートガバナンスに焦点を当てて実証的に分析することである。プロビット分析によれば、1996年以前には、メインバンクとの関係が強い企業、金融機関の持株比率が多い企業、そして労働組合のある企業において、赤字期に希望・早期退識が実施される確率が高いことが明らかとなった。また、1997年以降、組合やメインバンクの効果が見られなくなった一方で、大幅に収益性の低下したリストラの必要性が高い企業や外国人株主の持株比率が多いほど黒字期に希望・早期退職が実施される確率が高いことも明らかにされた。
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Research Products
(3 results)