2010 Fiscal Year Annual Research Report
コーポレートガバナンスと雇用・人事システムの制度的補完関係に関する実証研究
Project/Area Number |
20530249
|
Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
野田 知彦 大阪府立大学, 経済学部, 教授 (30258321)
|
Keywords | コーポレートガバナンス / 制度的補完性 / 労働組合 / 従業員主権 |
Research Abstract |
前年度は、株式所有構造やメインバンク制などの企業の外部的な要因が雇用調整や企業業績に与える影響を分析したが、今年度は、日本企業のコーポレートガバナンスと雇用システムとの関連を、従業員やその代表である労働組合という企業の内部的要因が雇用調整や企業業績に与える影響をという側面から分析して、1冊の図書にまとめた。研究から得られた主な結論は次のようにまとめられる。(1)労働組合を持つ大企業では、雇用調整速度が特に遅く、解雇を避ける傾向が強い。(2)労働組合のある企業ほど、会社が赤字になるまで雇用調整が抑制される傾向がある。(3)雇用用保障の強い企業では、労使間の情報共有が進み、生産性の向上がもたらさせている。(4)労働組合の存在が、正社員の希望退職や賃金カットを抑制する一方、新卒採用の抑制や非正規社員雇用の増加をもたらしている。(5)1997年の不況期を境として、雇用調整速度が速くなっている。これらの研究結果は、従業員や労働組合が企業の雇用政策や生産性向上に深く関与していることを浮き彫りにするものであると同時に、正社員と非正社員との二極化が正社員重視の企業統治から発生するものであることが示しており、日本企業のコーポレートガバナンスに、従来から言われてきたような従業員主権という側面があることを実証的に示している。また、企業のパネルデータを用いて、要魚な観点から企業の雇用調整の数量的な効果を実証している点は、現実の労働市場政策を考える上で、大きな貢献を果たすものといえる。
|
Research Products
(1 results)